結論:排泄表と時間を照らし合わせた優先順位で介助に入りましょう。
デイサービスで働く限り毎日やらないといけない排泄介助。
丁寧にやることはもちろん、時間内に終わらせないといけません。
特に帰宅前のトイレ誘導の時間は、遅れると利用者様の帰宅時間も遅れてしまいます。
排泄介助が終わらず、時間だけが過ぎて・・・
こんな状況に遭遇したことはありませんか?
排泄介助の時間が長引いて・・・
- 排泄介助が終わせられる気がしない。
- 「忙しい」時に、限って転倒事故が起こってやってられないくなる。
- 一生懸命トイレ介助しているのに他の利用者様から急かされる。
ただ排泄介助が遅れるだけで1日が非常に長く感じる。
介護の仕事を続けるのが嫌になる瞬間ではありませんか?
その排泄介助は排泄表を活用できていないからこそ起こっています。
排泄表で介助を管理できるようになると時間だけでなく利用者様の健康管理や他の職員との連携も図れます。
つまり、利用者様からのクレームは少なくなる代わりに「ありがとう」と言われることが多くなります。
排泄表で介助を管理するのに何をすればいいの?
- 排泄表と時計を照らし合わせて、優先順位をつける。
- 利用者様の排泄状況を確認する。
- 排泄介助で気づいた事を発言する。
いつでも利用者様から「ありがとう」と笑顔をもらえる専門性の高い介護士を目指しませんか?
【スムーズに介助を終わらせる】排泄表の使い方
排泄表なんてなくても早くトイレ介助できるようになれば解決じゃないの?
トイレの数、当日排泄介助に入れる職員数は変わりません。
- 空室のトイレはあるけど、介助できる職員がいない。
- 介助できる職員は余っているが空室のトイレがない。
- 介助量の少ない利用者様から介助して、手間のかかる利用者様だけが残っている。
管理していないとこんな状況になります。
デイサービスの排泄介助は時間との勝負。
時間内に排泄介助が終わらないと利用者様に不満を持たせることになります。
排泄介助の遅れは、排泄介助だけでなくそのほかのサービスも遅れることになります。
職員は焦ってしまって事故の元。
効率よくトイレ介助を終わらすと、介護士に余裕が出てきます。結果的に利用者様の不満を抑えることができます。
思っているよりも排泄介助に時間がかかっているときは、排泄表を元に時間管理ができていないと判断してください。
排泄表の進捗状況を見ながら進めてください!
排泄介助の流れ(トイレでの介助)
排泄の管理の話に入る前にまずは、介助の流れを確認します。
比較的自立度の高い利用者様でこれだけの介助が必要です。なぜなら、利用者様の一つ一つの動作に介助が必要だからです。(見守りも介助です)
これだけの動作の一つ一つに時間をかけていると次のメニューまでに排泄介助を終わらせることはできません。
時間内に必要な全ての利用者様の排泄介助を終わらせるにはコツがあります。
- 時計を見ながら介助する。
- 残りのトイレ介助が必要な利用者様の数を見る。
- 残りの時間とまだ介助できていない利用者様の数を照らし合わせる。
- 介助に時間のかかる利用者様から介助する。
- 備考(利用者様ごとに必要な介助)を見逃さないようにする。
時間内に終わらせても、「帰宅前には大きなパッドに替えてください」のような家族様からの依頼が実行できていなければ排泄介助したことにはなりません。
誰が排泄介助が終わっていて、誰がまだ終わっていないか一目見て分かるものが必要になります。
2種類の排泄表
全ての利用者様が気持ちよく帰っていただくために効率よく介助を終えなければいけません。
そのコツは・・・
排泄表を活用することで効率よくトイレ介助を行えます。
排泄表には2種類あります。
一つは名前と排泄介助をする時間を一覧にしたもの。
もう一つは介助の必要な人の名前を書いておいたホワイトボードです。
どちらのタイプを使うかは、事業所ごとで違います。
一覧表にしたもの
排泄の必要な利用者名を縦に配列し、横にトイレ誘導するタイミングを記載したもの。
10名以上の排泄介助(声かけのみも含む)を必要とする方がいる場合に効率的に介助できる排泄表です。
下記の表がサンプルです。
名前/時間 | 来所直後 | 昼食前 | 昼食後 | おやつ後 | 帰宅前 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
鈴木 一郎様 | ○ | ○ | ○ | |||
松田 ヨネ様 | S | ◉s | 紙おむつ | |||
佐藤 瑛一様 | ○ | ✖️ | ○ | ○ | ○ | 毎回トイレ誘導 |
山本 妙子様 | 拒否 | ○ | ✖️ | 声かけだけ | ||
中村 半次郎様 | 900cc | 帰宅前に尿量を測定 |
ここでのポイントは排泄の結果を記号で記載すること。
予め、一覧表にすることで一目見ただけでその利用者様の排泄状況が分かるだけでなく、今のタイミングでどの利用者様の介助すればいいのかもわかります。
排泄表の記号
- ○・・・排尿
- ◉・・・排便
- S・・・失禁
- ✖️・・・排尿、排便なし
- ◉s・・・便失禁
ほとんどのデイサービスでは一覧表タイプの排泄表を使用しています。
多人数の介助を効率的に終わらせないといけない場合に有効です。
排泄一覧表を使用するメリット、デメリット
排泄介助の対象者が増えれば増えるほど名前を書くだけで一仕事。
排泄介助をスムーズにするためのツールなのに作るだけで残業となると本末転倒です。
そこで、エクセルで一覧表を作ることをお勧めします。
一度、エクセル一覧表を作ってしまえばあとは名前を営業日ごとに名前を更新するだけ。
営業日は曜日ごとにエクセルのシートで管理すると便利です。
曜日ごとであればその日利用する利用者様が大きく変わることはありません。
これなら「あとどれぐらい介助をすればいいの?」ってしんどくならずに済むわね。
ホワイトボードを使う
ご覧の通り、「毎回トイレ誘導」と「帰宅前トイレ誘導」のスペースに排泄介助の必要な方の名前を書いたものです。
完全に介助が終わったら名前を消していきます。
毎回トイレ誘導の方は時間と排尿があったかどうかを記号で記しておきます。
ホワイトボードを使うメリット・デメリット
結局のところ定期的に更新しないけません。
しかも、利用者様の名前が書かれているので誰でも見れるところに置いてもいけません。
基本的には大きくてもA3サイズ程度のホワイトボードに書き切れるだけの、排泄介助の対象者の数の時に使うと便利な管理方法です。
小規模デイサービスやや立ち上げて1年未満の利用者数が30名以下のデイサービスで主に使われています。
利用者数がコンスタントに30名を超えるようになれば、一覧表タイプの排泄表に切り替えると排泄介助を管理しやすくなります。
排泄表を最大限に活用して効率よく介助を終わらせるポイントは「優先順位」
排泄介助を時間内に終わらせられるかどうかは介助する順番が大前提です。
介助量の多い利用者様を最後まで残しまうのは「誰か他の職員が行ってくれるだろう」と他力本願になりがちだからです。
原則として、介助に時間がかかる方、介助するのにやることが多い方から声をかけるのが効率的なやり方です。
新人介護士の場合は、この「介助に時間がかかる方、介助するのにやることが多い方」を積極的に介助に入るようにしましょう。
特にベット上でのおむつ交換はトイレ介助が手早く終わるだけでなく、あなたの介助力をあげるチャンス。
おむつ交換ができるようになると
私って、実は介護士に向いてるのかも!!
と、あなた自身の自信にもなります。
あなたがおむつ介助しているその間に、先輩介護士はそれ以外の方の介助を手早く終わらせることができます。
ただし、最初から一人で介助するのは不安だし、危険もあります。
他の先輩介護士や上司にお願いして付き添ってもらうようにしてください。
介助量の多い方の排泄介助に慣れてきたら、介助量の少ない人の介助もやってみましょう。
介護士を始めて半年もするとどの利用者様を排泄介助するのにどれぐらい時間がかかるか分かるようになります。
- あと何人の利用者様を排泄介助しないといけないか?
- あと、完全に排泄介助を終わらせるのにどれぐらいの時間がかかるか?
- 排泄介助を終わらせないといけない時間。
排泄表を見て、時計をみて、時間予測をしながら優先順位を決めて実行する。
これがスムーズに排泄介助を進めるポイントです。
【ただ介助するだけではダメ】排泄状況の確認。
高齢になればなるほど「排尿や排便」のトラブルが増えてきます。
日々の排泄状況を確認し、家族様に報告するまでが排泄介助の管理です。
排泄状況の報告することでお薬が変わったり、使用する排泄用品、福祉用具が変わることもあります。
排尿状態の確認
排尿状況を確認し続けることで些細な違いに気づけます。
些細な違いが大きな変化のサインになります。
排尿確認のポイント
- 色
- 頻度
- 排尿のタイミング
- 尿量(バルーンの場合は計量)
- 排泄用品の量
- 臭い
- パット類の汚れの変化
介護度の高い利用者様ほどわずかな違いが現れやすくなります。
体の不自由さのために水分摂取が困難になるからです。
水分量が少なくなると排尿回数や尿量が少なくなり、尿の色も濃くなります。
尿の色が濃い!!介助で水分摂取を促さないといけないな。
デイサービスでの支援を変更するきっかけになります。
排尿の管理は利用者様の健康を維持するのになくてはならない支援です。
排便状況の確認
排便状況は利用者様だけでなく、家族様が1番気にしていることの一つです。
ここでも、特に介助量の多い利用者様であればなおさらです。
利用者様、家族様が気にしている排便状況
- 便秘
- 下痢便
- 弄便
- 自己摘便
- 多量排便
高齢になると、排便が出にくくなります。
デイサービスで「今日で3日排便出ていません。」という家族様の申し送りは日常茶飯事です。
睡眠導入剤と下剤は、服用していない利用者様を見つけるのが困難なほどです。
また、おむつを使用している利用者様の家族様であれば、自宅で排便の処理をするのは一苦労。
デイサービスで排便の処理をしてもらえれるだけでも家族様は大助かりなのです。
今日は排便が中量ありました。
という報告を聞くだけで家族様は安心できるのです。
利用者様の排便があれば必ず家族様に報告をしましょう。
排尿、排便状況を家族様へ報告するまでが「排泄管理」
デイサービスでは排尿、排便の状況がどうだったかを報告するまでが介助です。
送迎職員からの申し送りで「帰宅後、どんな介助が必要か?」、「今日は便秘薬を飲ませるどうか?」が変わるからです。
家族様がいらっしゃる利用者様には家族様に報告すればOKです。
でも、独居の利用者様には誰に報告すればいいの?帰宅しても誰もいないわ。
独居の利用者様に関しては「キーパーソン」と呼ばれる人に連絡します。
キーパーソンって何?
利用者様に関わる人の中で、強い決定権を持っている人のことです。同居の家族様がいれば「妻」、「息子の嫁」、「娘」がキーパーソンであることが多いです。独居の方の場合、「別居している家族」、「ケアマネジャー」がキーパーソンになることが一般的です。ごく稀に「隣人」「友人」「成年後見人」がキーパーソンになることもあります。
成年後見人は最後の砦
加齢や病気できちんと判断できない人に対してお金の管理や身の回りのお世話、契約などの法的な手続きを代理で行う人のことです。
キーパーソンに関しては利用者様のケースファイルの「アセスメントシート」に記載されています。
利用されて間もない方はまだ作成中の為、ない場合もあります。
介護士の場合は相談員に報告して、相談員からケアマネに報告する流れが一般的です。
【これが出来たら介護の専門家!?】気づいた事を会議で発言できるスキル
専門性の高い介護士であるかどうかの一つの分かれ目が、「会議の場で発言できるかどうか」です。
ただ普通に介護をして報告するだけであれば、それは普通の介護士です。
これから、初任者研修、実務者研修を経て「介護福祉士」の取得を目指している方であれば会議の場で発言できるようにならなければいけません。
認知症であることなどの心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。(連携 第47条第2項)
厚生労働省H P(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82021000&dataType=0&pageNo=1)より引用
「連携」で一番イメージしやすい場が「定例会議」や「夕礼」です。
会議の場では、職員の発言を集約して議論します。
議論した結果、利用者様の支援の方法を決定していきます。
話し合うことで、利用者様が求めていることや他の職員の思いを知ることができます。
職員同士の連携での始まりは「発言」。
つまり、「発言」がなければ連携できません。
新人職員が「連携」で、できることは「発言」です。
排泄介助に関してはほぼ毎日「気づき」を得る機会があります。
どんな小さなことでもいいので気づいた事を発言しましょう。
情報共有は排泄介助の方法、頻度、時間、使用する排泄用品の変更の判断材料になる。
私の職場でも「リハビリパンツが足りない」という申し送りから、主介護者の家族様も「認知症の初期」で支援が必要ということが分かりました。
会議の場で話し合って「あれ?○○さんの奥さんもひょっとして認知症?」という意見が出ました。
後日、ケアマネに連絡しケアマネから別居の家族様に連絡してもらいました。
その後、奥様も認知症であることが分かりました。
職員が持っている情報は一部しか見ていないパズルのピースです。
会議の場で集約することでパズルのピースが合わさり、利用者様の周辺も見えるようになります。
見える部分が変わると当然、支援のあり方も変わります。
排泄介助に関する発言をするだけで、それ以外の問題を発見することにもつながるということです。
気づきを発言することは、職員の連携の一つなのです。
日々気づいたことは夕礼で小まめに申し送る
支援の方法をすぐに変えないといけない場合もあります。
その根拠となるのが「申し送り」です。
夕礼での申し送りはすぐに解決できる問題も明確になります。
夕礼での申し送りの内容
- パットには収まりきらない尿失禁があった。
- 一人でトイレに行かれ、全身排便まみれになっていた。
- 下剤を服用されているのに排便がなかった。
- 排尿の色が濃い。
- 便座に座るときに利用者様が「どうしていいか分からない・・・」という状態だった。
デイサービスの中だけで完結する支援であれば、ルールを変更あるいは使用する物品を増やすだけで解決します。
例えば、一人でトイレに行かれ全身排便まみれになっているのであれば、「今後は職員もトイレの中まで入って見守り介助をする」など、すぐにルール変更できます。
申し送りをするためには、気づきを得ないといけません。
ただ介助するだけではなく、今までの排泄介助時との違いを探しながら介助をしましょう。
どんなに小さな違いも申し送りで発言してください。
日々の介助で気づいたことをまとめて定例会議で発言する。
気づきたことを申し送りをすると。
毎日の申し送りで、よく聞く申し送りが出てきます。
帰宅前に、ひろしさんが慌ててトイレに行かれました。トイレまで間に合わずに失禁。ズボンまで濡れて帰宅時間が遅れています。
ここ1ヶ月ぐらい、ひろしさん帰宅前に慌ててトイレにいかれてズボンまで濡らされているぞ!
たまたま、その日だけ申し送りがあったものに関しては様子観察でOKです。
同じような申し送りが続くと、何らかの支援を考えないといけません。
そんな時は、定例会議の場で発言してください。
定例会議で話し合う議題の例
- 失禁の回数が多くなった→トイレの声かけをする回数を増やす。
- 便失禁でズボンまで汚すことが多くなった→トイレ介助するときは必ずリハビリパンツ、パット、予備のズボンを持ってトイレに入る。
- 紙おむつのサイズが大きすぎて尿漏れがある→適切なサイズの紙おむつを持参いただくようにケアマネ、家族様にアプローチする。
定例会議で発言したからといって必ずしもすぐに改善策が実行されるとは限りません。
- ケアマネ、家族様の同意が必要なもの
- 物品の準備が必要なもの
- 利用者様ご本人の理解・納得が前提のもの
- 職員の数的に工夫の必要なもの
- 介助方法の変更を決定するには時期が早いもの
物理的に実施するのが可能でもケアマネや家族様の同意や協力がなければ実行できません。
家族様ですら、介助方法の変更の重要性を理解できていない場合もあるからです。
理解してもらえるまで発言し続ける。
介護士にはそんな粘り強さも必要なのです。
「こんなこと言ったら笑われる」と恐れずに手を挙げて発言してみよう!!間違った事を言っていた場合、早くそのことに気づけます。
まとめ
いつまで経っても排泄介助が終わらない理由は管理できていないからです。
排泄介助が管理できるようになると、時間内に終わらせられるようになるだけではありません。
利用者様の健康維持ができ、今見えていない利用者様の問題に気づけるようになります。
他の上司や先輩方でも気づけないことに気づき、会議の場で発言することで問題解決できる。
そのきっかけを新人介護士のあなたでも作れるのです。
これって素敵じゃないですか?
今すぐに取り組めることは、排泄表と時計を見て「あとどれぐらいで排泄介助が終わるだろうか?」と予測することです。
日々ふりかえり、時間内に終わらなければ「なぜ、終わらなかったのか?」原因を見つけましょう。
時間内に排泄介助が終わらせられるようになれば利用者様への気づきが増えますよ。
介護士にとって気づきは、アンパンのあんこと同じぐらい大切なんです。
排泄介助は他人の汚い部分のお世話をします。
ありがとうと言われると嬉しいですが、そこまでに至るのに苦しい部分もあります。
それを乗り越えるために、もう一度排泄介助の基本的なことを確認しましょう。
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