結論:事故報告書の目的は同じ事故を再発させないことです。
デイサービスの送迎で決してリスクが0にはならない「交通事故」問題。
一度起こしてしまったら「なんであの時、もっと死角の確認をしていなかったんだろう」と後悔してしまいます。
事故報告書の目的は「二度と同じ事故を起こさない」こと。
同じ交通事故で憂鬱な気分をさせたり、利用者様を危険に晒してはいけません。
事故報告書の目的は、事故に直接関係ない第3者がみても状況をイメージできる報告書です。
事故報告書のベースは事故の状況。
状況が整理できていなければ、原因は分からず、対策も立てられません。
起こしてしまった事故は取り返しがつきません。
でも、せめてあなたが書いた事故報告書で同じ事故を防ぎたくはありませんか?
今回は、交通事故に関する事故報告書のお手伝いをさせていただきます。
起こしてしまった事故をなかったことにすることはできません。でも、起こした事故から2度と事故を起こさない対策を立てることはできます。
まずは事故発生までの状況を振り返りましょう。
2度と同じ失敗をしないための事故報告書の書き方【4つの注意点】
事故報告書の1番の目的は「2度と同じ事故を起こさない」です。
事故報告書を書く4つの注意点
- 交通事故の状況
- 事故の状況を分析
- 最初防止の対策を立てる
- 見取り図を正確に書く
つまり「ただ書いているでけ」は時間と紙の無駄遣いです。
事故報告書を書きながら交通事故時の振り返りをしましょう。
事故報告書のベースになるのは事故状況の把握です。
事故状況から、原因の分析と再発防止の対策を立てます。
事故を振り返るときのキーポイント
- 事故発生の時間帯
- 相手がある場合は、相手の車と自分の車との位置あいと軌道
- 気象条件
- 車の状態(故障部分がないかどうか)
- 運転手自身の心理状態
- 次の送迎先までの時間の余裕
- 交通量
- 車からの死角
時間が経てば、車の周囲の状況が変わります。
時間ごとに事実の確認をしましょう。
正確な事故状況の振り返りが事故の再発防止の第一歩です。
注意点①:交通事故の状況【簡潔に時系列に書く】
事故の状況は家を立てるときで言うところの基礎の部分となります。
基礎がしっかりしていないと家は崩れてきます。
同じように、事故報告書の心臓部は事故が発生した状況です。
事故状況を整理する3つのポイント
- 時系列(時間ごとに)事実をまとめる。
- 簡潔にまとめる。(事実だけを最低限の文字数で)
- 第3者が見てもイメージできるように。
では実際に、書き方の事例を見てみましょう。
まずはどんな事故を書いてから、車の動き、事故発生時の環境、ケガの有無、その後の動きを書きます。
事故報告書を書くときに言われるのが「客観的に書いてください」です。
客観的に事故状況を書くポイント
- いつ
- どこで
- どうのような状況で運転していたら
- 何が原因で
- 誰と誰が(これは自車、相手方の車と表現することが多いです)
- どんな事故を起こしたか
定型分として覚えておくと事故報告書の「書き方」の問題は解決です。
誤解されやすい表現
・左に車線変更させる。その際に車が接触したので・・・・
→実際に接触したかどうか、車から降りるまで分からない。
・10:00 ●●通り(片道2車線の道)を通行中に次の交差点で左折するために、自車を左に車線変更させた際に、自車の左の後方からの音が聞こえ、衝撃を感じる。
→1文が長すぎて何が言いたいか分からない。
・10:10、相手にケガがないので・・・・
→「その時は動揺してて痛みがなかった・・・」と後からケガがあったと言われることが多々あります。もしケガのことを書きたければ「外傷はない様子」か、本人が言っている言葉をそのまま「」で引用しましょう。
同じ職場で長く働き続ければ続けるほど、その職場でしか通用しない表現を使ってしまいがちになります。
上司や他の部署の人でも現場の状況をイメージできるように事故報告書を書きましょう。
ただ、交通事故を起こした当初は正常な精神状態でないこともあります。
状況を思い出せないぐらい。
そのための対策が「ドライブレコーダー」の設置です。
デイサービスの送迎車でもドライブレコーダーは一般的になっています。
人間での記憶力には限界があります。
事故状況に曖昧な部分があってもドライブレコーダがあれば、事故を正確に確認することができます。
送迎車にまだドライブレコーダーがなければ今すぐ、上司に打診しましょう。
事故発生状況が正確に書けていないと原因の分析をしたり、事故の再発防止の対策を立てることはできません。
注意点②:事故が発生した原因【状況を分析する】
事故の状況を整理したら、事故発生原因を分析します。
事故の原因が分析できなければ、対策を立てることができないので細かく見ていきましょう。
事故状況の分析は大きく分けて二つに分けられます。
つまり
1、人的な原因
2、環境的な原因
です。
つまり、人間のミスと運転するときの状況を改善できないか考えるということです。
ここでNGな原因の分析の仕方は
✖原因を他人の責任にすることです。
NGな事故状況の分析(原因の見つけ方)
- 相手の車が自分の車のウインカーを確認せずに突っ込んできた。
- 私は追突されたので相手が悪い。
- 隣を走っていた車が幅寄せしてきて接触してしまった。
送迎で高齢者を乗せて運転する限りはあらゆる状況を予測して安全運転をしなければいけません。
自分の運転を振り返って再度事故が発生するのを防止するという考え方が事故防止につながるのです。
事故の要因の書き方一例
人的要因 | 左後方の確認が不十分だった。 |
環境的要因 | 激しい雨のため、視界が悪かった。 |
自分の運転で見落としがなかったのだろうか。
何かの仕組みや道具があれば事故が防げたのではないか。
あくまでも自分に原因を求めましょう。
注意点③:再発防止の対策【原因に対応させる】
原因を分析出来たら、あとは対策を立てるだけです。
必ず人的、環境的要因それぞれに対応した対策をたててください。
対策の立て方一例
人的要因 | 左後方の確認が不十分だった。 | 対策 | 左に車線変更するときは左と左後方をルームミラー →サイドミラー→目視の順番で確認する。 |
環境的要因 | 激しい雨のため、視界が悪かった。 | 対策 | 雨で視界が悪くても自車に近づく車を把握するために、後付けでセンサーを取り付ける。 |
対策を立てるときの注意点
- 必ず実行できる対策をたてる。
- 他の職員でも実行できる対策をたてる。
- 以前に立てた対策は使えない。(そもそも、以前と同じ事故を起こす時点で別の原因を考えないといけません)
- 原因に基づいた対策をたてる。
- 習慣化可能な対策をたてる。
対策は実行し続けなければ意味がありません。
事故報告書を書くための対策ではなく、事故の再発を防止するためのものだからです。
事故原因を解決するために何をすればいいか?続けられるにはどうすればいいか?そんな対策を立てましょう
注意点④:事故発生時の見取り図【誰が見ても正確に理解できる】
事故現場をイメージするには見取り図がなくてはいけません。
最後に事故発生の見取り図ですが、事故発生状況を視覚的に伝えるものです。
言葉だけで事故発生状況をつたえるのは限界があります。
しかし、見取り図を使うことで事故の状況をだれが見ても理解できるようになります。
東京スカイツリーがどういう建物か言葉で伝えるより写真を見せたほうが早いのと同じです。
見取り図を描く時の注意点
- 走行していた道路幅が何mか記載する。
- 近くの信号や標識を描く。
- 自車と相手の車の位置を描く。
- 目印となる建物を描く。
- 車の動きは→で表現する。
- 方角も記入する。
- 事故現場の周辺状況も描く。
事故現場の見取り図を書くことでその場にいなかった上司や他の送迎職員でも事故が発生したときの情景を思い浮かべやすくなります。
正確に必要なポイントをおさえて描きましょう。
送迎時の交通事故でよくある原因5選【みんなやってしまいがちのミス】
交通事故が起こしてしまう原因はシンプル。
一瞬のミスです。
みんながよくやってしまうミスを理解することで大幅に事故リスクを下げることができます。
不適切な道の選択
不適切な道とは、自分の運転技術に見合わない道。
道の選択が未熟な運転初心者や送迎に出だして利用者様を乗せて運転することになれた中級者に陥りがちです。
運転しにくい道も時には使わないといけないことは多々あります。
不適切な道を使わないといけないときの注意点
- その道を通らないと利用者様の自宅に行けないときのみ使う。
- 不適切な道を使うときは、事故発生確率の最も高い個所を一度車から降りて周囲の安全状況の確認をしたり助手に安全確認してもらってから車を進める。
- 今の運転技術に見合わない場合は上司に相談して送迎する運転手を替えてもらう。
- 狭い道、鋭角の道は必ず徐行する。
- カーブミラーを有効に使う。
- サイドミラーの角度を変えて運転席から道の両端をみえるように工夫する。
- あらかじめ不適切な道を通るとわかっているときは他の運転手に道を通る時の注意点を聞く(運転初心者)
送迎時間に余裕があり、他の道からでも送迎が可能な時はできるだけ避けておいてどうしても使わないといけない時だけ使うようにすると事故リスクを下げられます。
送迎に慣れてくると、事故リスクが高い道を通りたくなります。
しかし、あえて事故リスクの高い道を選ぶのはベストな選択とは言えません。
送迎は、時間通りに安全にできるに越したことはありません。
狭い道や鋭角の道は通らなければいけないこともあります。常に運転技術を高めつつ、慢心しないようにしましょう。
死角の確認不足
車や建物には死角が必ずあります。
死角は運転席からは見えなくても、人や車がいるかもしれません。
死角の把握は事故発生原因を取り除くのに必須です。
よくある死角
- 車体の死角
- 柱の死角
- 右左折時の死角
旧村地域や団地などの道は死角が多くなります。
運転するときに死角ばかりだと、運転するのが怖くなりますよね?
死角が多ければ、その分確認する回数を増やすのが事故リスクを下げる最大の対策です。
死角の多い場所を通行する場合
- 発進前に車の周囲を確認する。
- 右左折時に巻き込み確認がないか確認する。
- 車線変更時に後方に車が来てないか確認する。
車や人が来ているかどうか分からないのに無理に通行すると事故が起きてしまいます。
100%安全なタイミングはありませんが、限りなく100%に近いタイミングで通行できるようにできる確認は全て確認してから通行するようにしましょう。
死角はみえないだけで、危険がないわけではありません。事故をしてから「あのとき、もっと死角をかくにんしておけば・・・」と思っても遅いです。
車の整備不良
車の整備不良も交通事故の原因になります。
車の整備不良
- タイヤの溝不足
- タイヤの空気圧不足
- エンジンの異音
- ワイパーのふき取り不足
- ウインカーが点滅しない
- ヘッドライトの電球が切れている。
- 窓が汚れている。
- テールランプの電球が切れている。
送迎車は、デイサービスで仕事をするための道具です。
道具は整備しておかないと安全に使用することはできません。
整備不良が原因で交通事故を起こす場合も少なくありません。
車に乗車する前後には必ず車の周囲確認をして車の整備不良がないか確認しましょう。
車の修理に関しては施設の承認がいるので、見つけた時点で上司に報告しましょう。
車も利用者様を送迎するための大切な仕事道具です。安全、安心な送迎のために送迎の前後で車両の不具合がないか確認しましょう。
心身状態が落ち込んでいる
心身状態によっても運転に影響がでます。
事故リスクに関わる心身の状態一例
- 寝不足。
- 心配事で上の空。
- ストレスが溜まってイライラしている。
- 風邪気味で咳やくしゃみ、鼻水があり、熱っぽい。
- 不安ごとがあって運転に集中できない。
このような状態のときは絶対に運転しないようにしましょう。
「私が送迎にでなければ、送迎が回らない」と思ってしまいますが・・・
事故を起こしてしまうと、場合によっては免許停止や免許取り消しの処分になります。
また、施設によっては「送迎禁止」のペナルティーを受けることもあります。
そうなると余計に送迎が回らなくなります。
安全運転に支障が出るときは、業務のことは一旦置いておいて上司に相談しましょう。
自分の状態を把握して運転するのに危険が伴うときは運転を控えましょう。
運転技術の未熟さ
「交通事故を起こす=運転技術の未熟さ」を認識しましょう。
運転初心者の5人に1人が免許取得してから1年以内に事故を起こしています。
もちろん、ベテラン運転手でも事故は起こします。
それは、慢心であったり、運転技術の過信、確認不足など何らかの「未熟さ」のために事故を起こすのです。
送迎で一番事故を起こしやすいのが「慣れてきてから」です。
なので、常にどこで事故がおきるかわからないと思って細心の注意を払いながら運転をしましょう。
運転の未熟さを克服するためには、危険予測をするしかありません。今の見える状況でどのような危険があるか想像するしか交通事故を防ぐしかありません。
事故報告書の活用法【2度と同じ事故を起こさないポイント】
事故報告書はただ書けばいい書類ではありません。
2度と同じ事故を起こさないために起きた事故を分析して対策を立てるためのいわば運転するときの仕組みつくりなのです。
事故報告書を活用する3つのポイント
- 立ちた対策を徹底する
- 定例会議で振り返る
- もので事故原因を解決できる場合は1週間以内に発注する。
いわゆる「凡事徹底」。
当たり前のことを実行し続けていくことが事故の再発防止には必要です。
「いけるだろう」「めんどくさい」と言ってやらなくなる時が事故の再発が起きる時です。
立てた対策を徹底する
せっかく、苦労して事故報告書を書いて対策を立てても徹底できなければ意味がありません。
また、同じ事故を起こして利用者様や同乗者あるいは相手を死に至らしめたらそれこそその事故報告書は全く意味がないものになります
慢心や風化は事故の再発を呼びます。
立てた対策を徹底していても事故が起きる確率は0になりません。
立てた対策を徹底しないのは「私は事故をおこします」といっているようなものです。
時間の経過とともに立てた対策に変更が必要だと感じれば上司に相談しましょう。
定例会議で事故報告書の振り返りをする
交通事故は、人が起こすものです。
車の整備不良や気象条件という安全運転に支障のある状況があるといえども、決定的な原因は運転手にあります。
そして、交通事故は起こした本人だから起きたのではなく他の送迎職員もおこす可能性があるのです。
起きた事故を定例会議で振り返るのは「傷に塩を塗り込む」ように痛いことですが、周りの職員にも中を促す意味で必要なのです。
定例会議で事故報告書を振り返ることで、違う視点で事故の対策に気付けることもあります。この痛みを乗り越えるだけのリターンは十分にあります。
モノで解決できる事故は1週間以内には調達する
ものを揃えることで事故の再発を防げるのであれば時間との勝負です。
すぐにでも物を準備しておきましょう。
もので事故の再発を防げる具体例
- 送迎前後の車両確認のチェックリストを作る。
- 車にセンサーを付ける。
- 運転席からすぐ見えるところに注意をうながすボードを置いておく。
- 送迎票の書式を変える。
それほど、費用が掛からなくて、モノを調達・整備するだけで事故の確率を下げることができることはすぐに実行しましょう。
送迎は利用者様や助手、相手の運転手の命がかかわっています。
ものを調達・整備するだけで1%でも事故の確率を下げられるのであれば安いものです。
送迎には人の命がかかっています。もので解決できるのであれば1週間以内に調達しましょう。
最後に
事故報告書は同じ事故を起こさないために書く「業務マニュアル」と一緒です。
危険予測が甘かったために起こしてしまったのが交通事故です。
次に起こさないための事故報告書を書くのに一番重要なのが「事故状況」です。
事故状況が曖昧だと原因は分からず、再発を防ぐための対策も立てられないからです。
人間の記憶力には限界があるもの。
どうしても曖昧であったり、思い出せない部分があります。
そんな時に活躍するのがドライブレコーダー。
事故当時の状況を正確に確認することができます。
あなただけでなく、他のスタッフが同じような事故を起こすのを防ぐヒントを与えてくれます。
あなたの職場の送迎車にまだドライブレコーダーが付いていなければ、上司に設置を打診しましょう。
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