
結論:事故の状況から原因を分析して対策を立てよう。事故報告書の目的は同じ事故を再発させないことです。

この記事の対象者
・デイサービスのリーダー、管理者になりたての相談員
・送迎中に交通事故を起こしたデイサービスの介護士
・はじめて事故報告書を書く介護士
です。

この記事を読むことで
・交通事故を起こしたときの事故報告書の書き方
・事故再発の防止策のたて方
・事故を起こした介護士への指導のポイント
を理解することができます。
デイサービスの職員は送迎とは無縁ではありません。
そして、送迎に出るからには運転ができなければいけません。
そこで問題になるのが
交通事故の問題。
基本的には交通事故を起こさないように安全確認を徹底したり、車の機器などに不具合がにか日々確認しています。
それでも、事故をするときは事故をしてしまいます。
そして、事故を起こしてけが人がいなくて無事事故処理が終わったとしてももう一つのビッグイベントがあります。
それは
事故報告書
私も送迎時の事故報告書を書いていて
- これから、事故報告書を書かないといけない・・・・・。しんどいな。
- あのとき、もっとここの安全確認をしていたら事故は起きていなくてこの時間に事故報告書を書かなくて済んだのに。
- 事故の原因と対策を考えているけどどう書けばいいかわからない。
と思ったものでした。
でも、私にも部下に送迎に起きた事故の事故報告書作成の指導をする立場になって・・・
その考え方が間違っていたと言うことに気づきました。
事故報告書=始末書と思われがちですが
始末書と事故報告書は全く違うものです。
その違いとは
始末書はその人に対する「処分(ペナルティ)」ですが
事故報告書は同じ事故を2度と起こさないための対策を立てるためのもの
確かに今回の送迎時の事故はケガがなかったり、あっても軽傷で済んだかもしれないです。
でも、次回同じ事故を起こすと
利用者様、助手、事故相手、場合によっては自分も
死んでしまうかもしれません。
この話をするのは、私がデイサービスで働き始めて7年目で3ヶ月間で3回も続けて交通事故を起こしたことがあるからです。
その時の上司から言われた言葉にとてもショックを受けました。
「あなた、人の命をなんだと思っているの?何回も同じ事故を起こすと言うことはそう言うことよ。」
それを言われるまで、私は「事故報告書なんて、上司に提出するだけのものだからとりあえず形式だけ整えて提出すればいいや」と思っていました。
でも、上司の言葉で

このままだと、そのうち人を殺してしまう・・・・
と大反省しました。
それからは、送迎中に事故を起こさなくなりました。
もちろん、これからも事故を起きないという保証はありません。
もし送迎中に事故を起こしてしまったら
2度と同じ事故を起こさないために、私は何ができるのだろう?
と思って事故報告書を書きましょう。

起こしてしまった事故をなかったことにすることはできません。でも、起こした事故から2度と事故を起こさない対策を立てることはできます。2度と送迎中に事故を起こさないための報告書の書き方を解説します。
2度と同じ失敗をしないための事故報告書の書き方【4つの注意点】

事故報告書の1番の目的は「2度と同じ事故を起こさない」です。つまり「ただ書いているでけ」は時間と紙の無駄遣いです。事故報告書を書きながら交通事故時の振り返りをしましょう。
注意点①:交通事故の状況【簡潔に時系列に書く】

事故の状況は家を立てるときで言うところの基礎の部分となります。
基礎がしっかりしていないと家は崩れてきます。
同じように、事故報告書の心臓部は事故が発生した状況です。

事故発生状況を書く時に
・時系列に(時間の経過ごとに)
・簡潔に(必要最低限の言葉で)
・第3者が見ても想像できる
書き方を意識しましょう。
では実際に、書き方の事例を見てみましょう。
10:00 ●●通り(片道2車線の道)を通行中に次の交差点で左折するために、自車を左に車線変更させる。その際に、自車の左の後方からの音が聞こえ、衝撃を感じる。
当時、はげしい雨が降っていて車の周囲が見にくい状況だった。
すぐに車を安全な場所に止める。車を確認すると、自車の左後方部分と相手方の車の右前方に傷がある状態だった。
10:05、相手方にケガの確認するも「特にケガや痛いところはないです」とのこと。自車に利用者様は乗車されておらず。
10:10、110番通報する。施設の上司にも連絡し、事故が発生したことを報告する。
10:20、警察が到着。事故発生時の状況について報告する。
10:40、相手方と連絡先を交換しその場を後にする。

まずはどんな事故(追突、接触、原付の巻き込みなど)を書いてから、車の動き、事故発生時の環境、ケガの有無、その後の動きを書きます。
ここでも重要になるのが
- いつ
- どこで
- どうのような状況で運転していたら
- 何が原因で
- 誰と誰が(これは自車、相手方の車と表現することが多いです)
- どんな事故を起こしたか
最低限の言葉で時系列で説明しましょう。
- 左に車線変更させる。その際に車が接触したので・・・・
→実際に接触したかどうか、車から降りるまで分からない。
10:00 ●●通り(片道2車線の道)を通行中に次の交差点で左折するために、自車を左に車線変更させた際に、自車の左の後方からの音が聞こえ、衝撃を感じる。
→1文が長すぎて何が言いたいか分からない。
- 10:10、相手にケガがないので・・・・
→「その時は動揺してて痛みがなかった・・・」と後からケガがあったと言われることが多々あります。もしケガのことを書きたければ「外傷はない様子」か、本人が言っている言葉をそのまま「」で引用しましょう。

事故発生状況が正確に書けていないと原因の分析をしたり、事故の再発防止の対策を立てることはできません。
注意点②:事故が発生した原因【状況を分析する】

事故の状況を整理したら、事故発生原因を分析します。
事故の原因が分析できなければ、対策を立てることができないので細かく見ていきましょう。
事故状況の分析は大きく分けて二つに分けられます。
つまり
1、人的な原因
2、環境的な原因
です。
人間(運転手)の操作ミスや確認不足のこと。基本的には人的原因ありきで原因を分析します。なぜなら、車を運転するのは人間だからです。
一例として
- 左折時の巻き込み確認不足。
- 一時不停止。
- 後方の確認不足。
- 死角の把握不足。
- アクセルとブレーキの踏み間違い。
運転する環境によるもの。運転者を取り巻く環境が間接的に事故の原因になっている。
一例として
- 車の整備不良(ウインカーが点滅しない)
- 長時間労働で運転手の判断能力が落ちている。
- 雨や霧など視界が悪い状態。
- 交通渋滞で運転手が焦る要因になっている。
- 乗車前に安全確認のチェックリストがない。

運転の時に使う道具を整備したり、運転時のルールを決めたりして運転者の事故防止を図ります。
つまり、人間のミスと運転するときの状況を改善できないか考えるということです。
ここでNGな原因の分析の仕方は
✖原因を他人の責任にすることです。
- 相手の車が自分の車のウインカーを確認せずに突っ込んできた。
- 私は追突されたので相手が悪い。
- 隣を走っていた車が幅寄せしてきて接触してしまった。
送迎で高齢者を乗せて運転する限りはあらゆる状況を予測して安全運転をしなければいけません。
自分の運転を振り返って再度事故が発生するのを防止するという考え方が事故防止につながるのです。
事故の要因の書き方一例
人的要因 | 左後方の確認が不十分だった。 |
環境的要因 | 激しい雨のため、視界が悪かった。 |

自分の運転で見落としがなかったのだろうか。
何かの仕組みや道具があれば事故が防げたのではないか。
あくまでも自分に原因を求めましょう。
注意点③:再発防止の対策【原因に対応させる】

原因を分析出来たら、あとは対策を立てるだけです。
必ず人的、環境的要因それぞれに対応した対策をたててください。
対策の立て方一例
人的要因 | 左後方の確認が不十分だった。 | 対策 | 左に車線変更するときは左と左後方をルームミラー →サイドミラー→目視の順番で確認する。 |
環境的要因 | 激しい雨のため、視界が悪かった。 | 対策 | 雨で視界が悪くても自車に近づく車を把握するために、後付けでセンサーを取り付ける。 |
- 必ず実行できる対策をたてる。
- 他の職員でも実行できる対策をたてる。
- 以前に立てた対策は使えない。(そもそも、以前と同じ事故を起こす時点で別の原因を考えないといけません)
- 原因に基づいた対策をたてる。
- 習慣化可能な対策をたてる。
対策は実行し続けなければ意味がありません。
事故報告書を書くための対策ではなく、事故の再発を防止するためのものだからです。

事故原因に対応したもので、なおかつ継続的に実行できる対策を立てましょう。
注意点④:事故発生時の見取り図【誰が見ても正確に理解できる】

最後に事故発生の見取り図ですが、事故発生状況を視覚的に伝えるものです。
言葉だけで事故発生状況をつたえるのは限界があります。
しかし、見取り図を使うことで事故の状況をだれが見ても理解できるようになります。
東京スカイツリーがどういう建物か言葉で伝えるより写真を見せたほうが早いのと同じです。
- 走行していた道路幅が何mか記載する。
- 近くの信号や標識を描く。
- 自車と相手の車の位置を描く。
- 目印となる建物を描く。
- 車の動きは→で表現する。
- 方角も記入する。
- 事故現場の周辺状況も描く。

事故現場の見取り図を書くことでその場にいなかった上司や他の送迎職員でも事故が発生したときの情景を思い浮かべやすくなります。正確に必要なポイントをおさえて描きましょう。
送迎時の交通事故でよくある原因5選

送迎初心者、中級者が作りやすい事故の原因を解説します。
不適切な道の選択

不適切な道とは、自分の運転技術に見合わない道。
道の選択が未熟な運転初心者や送迎に出だして利用者様を乗せて運転することになれた中級者に陥りがちです。
- 極端に狭い道を使う
- 鋭角の道を選択する
- 事故多発地帯の道
- 抜け道を使いすぎる
- 死角が多い道を使う

でも、利用者様の送迎をするのにこれらの道を全く使わないわけにはいけないよね?
そこで、どうしても不適切な道を使わないといけないときの注意点として
- その道を通らないと利用者様の自宅に行けないときのみ使う。
- 不適切な道を使うときは、事故発生確率の最も高い個所を一度車から降りて周囲の安全状況の確認をしたり助手に安全確認してもらってから車を進める。
- 今の運転技術に見合わない場合は上司に相談して送迎する運転手を替えてもらう。
- 狭い道、鋭角の道は必ず徐行する。
- カーブミラーを有効に使う。
- サイドミラーの角度を変えて運転席から道の両端をみえるように工夫する。
- あらかじめ不適切な道を通るとわかっているときは他の運転手に道を通る時の注意点を聞く(運転初心者)

狭い道や鋭角の道は通らなければいけないこともあります。常に運転技術を高めつつ、慢心しないようにしましょう。
死角の確認不足

車や建物には死角が必ずあります。
死角は運転席からは見えなくても、人や車がいるかもしれません。
死角の把握は事故発生原因を取り除くのに必須です。
運転時の死角
- 車体の死角
- 柱の死角
- 右左折時の死角

運転するときって、死角ばっかり・・・。
やっぱり送迎って怖いね。
そこで死角の対策として
- 発進前に車の周囲を確認する。
- 右左折時に巻き込み確認がないか確認する。
- 車線変更時に後方に車が来てないか確認する。

死角はみえないだけで、危険がないわけではありません。事故をしてから「あのとき、もっと死角をかくにんしておけば・・・」と思っても遅いです。
車の整備不良

車の整備不良も交通事故の原因になります。
- タイヤの溝不足
- タイヤの空気圧不足
- エンジンの異音
- ワイパーのふき取り不足
- ウインカーが点滅しない
- ヘッドライトの電球が切れている。
- 窓が汚れている。
- テールランプの電球が切れている。
車に乗車する前後には必ず車の周囲確認をして車の整備不良がないか確認しましょう。
車の修理に関しては施設の承認がいるので、見つけた時点で上司に報告しましょう。

車も利用者様を送迎するための大切な仕事道具です。安全、安心な送迎のために送迎の前後で車両の不具合がないか確認しましょう。
心身状態が落ち込んでいる

心身状態によっても運転に影響がでます。
- 寝不足。
- 心配事で上の空。
- ストレスが溜まってイライラしている。
- 風邪気味で咳やくしゃみ、鼻水があり、熱っぽい。
- 不安ごとがあって運転に集中できない。
このような状態のときは絶対に運転しないようにしましょう。
「私が送迎にでなければ、送迎が回らない」と思ってしまいますが・・・
事故を起こしてしまうと、場合によっては免許停止や免許取り消しの処分になります。
また、施設によっては「送迎禁止」のペナルティーを受けることもあります。
そうなると余計に送迎が回らなくなります。
安全運転に支障が出るときは、業務のことは一旦置いておいて上司に相談しましょう。

人間が運転する限り、心身の状態に波があります。自分の状態を把握して運転するのに危険が伴うときは運転を控えましょう。
運転技術の未熟さ

「交通事故を起こす=運転技術の未熟さ」を認識しましょう。
もちろん、ベテラン運転手でも事故は起こします。
それは、慢心であったり、運転技術の過信、確認不足など何らかの「未熟さ」のために事故を起こすのです。
送迎の初心者や中級者はもっと未熟な部分があります。
なので、常にどこで事故がおきるかわからないと思って細心の注意を払いながら運転をしましょう。

運転の未熟さを克服するためには、危険予測をするしかありません。今の見える状況でどのような危険があるか想像するしか交通事故を防ぐしかありません。
事故報告書の活用法【2度と同じ事故を起こさないポイント】

事故報告書はただ書けばいい書類ではありません。2度と同じ事故を起こさないために起きた事故を分析して対策を立てるためのいわば運転するときの仕組みつくりなのです。
立てた対策を徹底する
せっかく、苦労して事故報告書を書いて対策を立てても徹底できなければ意味がありません。
また、同じ事故を起こして利用者様や同乗者あるいは相手を死に至らしめたらそれこそその事故報告書は全く意味がないものになります
慢心や風化は事故の再発を呼びます。
- 事故から半年以上たって、「もう事故は起きないだろう」と思う。
- 送迎時間に追われて「ちょっとぐらいなら確認を省いても大丈夫だろう」と判断する。
- 死角の多い場所なのに、助手の手を借りなかったり、一旦車から降りて安全確認をしない。
- 「相手の車が勝手によけてくれるだろう」と自分本位な予測をする。
- 心身の状態が悪くて適切な判断ができない。

立てた対策を徹底していても事故が起きる確率は0になりません。立てた対策を徹底しないのは「私は事故をおこします」といっているようなものです。時間の経過とともに立てた対策に変更が必要だと感じれば上司に相談しましょう。
定例会議で事故報告書の振り返りをする

交通事故は、人が起こすものです。
車の整備不良や気象条件という安全運転に支障のある状況があるといえども、決定的な原因は運転手にあります。
そして、交通事故は起こした本人だから起きたのではなく他の送迎職員もおこす可能性があるのです。
起きた事故を定例会議で振り返るのは「傷に塩を塗り込む」ように痛いことですが、周りの職員にも中を促す意味で必要なのです。

定例会議で事故報告書を振り返ることで、違う視点で事故の対策に気付けることもあります。この痛みを乗り越えるだけのリターンは十分にあります。
モノで解決できる事故は1週間以内には調達する

- 送迎前後の車両確認のチェックリストを作る。
- 車にセンサーを付ける。
- 運転席からすぐ見えるところに注意をうながすボードを置いておく。
- 送迎票の書式を変える。
それほど、費用が掛からなくて、モノを調達・整備するだけで事故の確率を下げることができることはすぐに実行しましょう。
送迎は利用者様や助手、相手の運転手の命がかかわっています。
ものを調達・整備するだけで1%でも事故の確率を下げられるのであれば安いものです。

送迎には人の命がかかっています。もので解決できるのであれば1週間以内に調達しましょう。
最後に


