結論:「いつもと違うところはないかな」と考えながら利用者様の排泄介助に入ろう!!
最近、介護士を始めたばかりのあなたに質問です!!
排泄介助はズボンや下着を上げ下ろししたり、リハビリパンツ・パッドを交換するだけでいいですか?
ん〜、それだけじゃダメなんじゃないの?
その通り、介護士の鏡です。
実は排泄介助は観察力が命。利用者様の排尿や排便は、体の中の状態を雄弁に語ってくれます。
ただ、悲しいことに介護士は利用者様の排尿や排便から正しい体からのメッセージを受け取ることはできません。なぜなら、診断するのは「医師の専売特許」だからです。
英文に関して、医師が英文を解読する通訳士とするなら介護士は英文を医師に届ける人です。利用者様の体からのメッセージを記録し、家族様やケアマネに仲介してもらって主治医に伝えるのが介護士の仕事です。いかに医師でも排泄状況という情報がなければ診断することもできません。
介護士だからこそできる排泄ケアは3つあります。
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
つまり、観察することです。ただ排泄介助をするのではなく「いつもと違うところはないかな?」を見つけ出すことです。
この3つは介護士を始めたばかりのあなたでも今から始められるケアです。
【観察と記録】排泄は健康状態のサイン。
トイレ介助はただやればいいわけではありません。トイレ介助をやりつつその利用者様のおしっこの色や臭い。排便の硬さを観察して記録する。
その積み重ねが利用者様のQOL(生活の質)を維持することにつながります。
- 量
- 頻度
- 臭い
- 色
- 状態
パッドを変える時にも、それを意識して記録を続けると「実は尿失禁が自宅でも多くなっている」ということはよくあることです。
排泄の状態は、利用者様の持病によるものもあります。
しかし、新たな病気や病状の悪化を示すものも少なくありません。
最も起きやすい排泄トラブルを見つけよう!
利用者様は排泄に関して、様々な問題を抱えています。
中でもよく申し送りで聞くのが「排尿障害」と「排便障害」です。
申し送りなんかでもよく聞く言葉たち。
こちらも申し送りでよく聞く言葉です。高齢になると何らかの排尿、排便トラブルが出てきます。利用者様自身の持病によるものもありますが、利用者様の体調の変化によるものもあります。
介護士だからこそできるケアは3つです。
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
「排泄のデータ」を集めて家族様に報告することです。
もし仮に、利用者様が腹痛で病院受診する際に「ただ腹痛がある」という情報だけでは主治医は正確なことを診断しづらくなります。
情報が少ないためです。
だから具体的な排泄状況の情報が必要なんです
具体的な排泄状況の申し送り方
- 昼食後、トイレにて多量の普通排便あり。
- 入浴前、パット内に多量の尿失禁あり。
- 昼食前、パット内にコロ便あり。
利用者様が自宅で排泄のデータを集めようとすると、いちいちノートに書き留めないといけないので面倒ですが、デイサービスであれば記録は仕事の一つです。
あとは、利用者様の「いつも通り」と違う部分に気づいて記録して、家族様に報告すればOKです。
排泄用語は現場や申し送りでよく使われます。覚えておきましょう!!
排泄のトラブルに関する3つのケア
介護士にしかできない、排泄のケアは3つあります。
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
特に介護士として求められるのが「気づく」です。
注目するのは、一般的な回数や量よりも「普段と違う様子はないかな〜?」です。
トイレ介助で見つけるべき「いつもと違う」こと具体例
- 量
- 頻度
- 臭い
- 色
- 状態
トイレ介助に入るたびにこの5つの項目は意識しましょう。
少しでもいつもと違うがあれば、記録して家族様に報告します。
重大なことかどうか分からなければ、看護師にも報告しておきましょう。
排泄に関して失禁や「いつもと違うこと」があれば、ケース記録に記録します。
利用者様の小さな変化が「大きな出来事」になっている可能性があります。
- いつもより、尿の色が濃い
- 失禁回数が多い
- 1回の尿量が少ない
- 訴えはあるけど、排尿がない
- ほぼ1週間ぐらい排便がない
とはいえ、その時に排泄介助に入っただけでは何も気づけない場合もあります。例えば「今日は排尿の回数が少ないから水分摂取を促そう」と言った感じです。
そんな時に便利なのが排泄表です。
排泄表の記号
- ○・・・排尿
- ◉・・・排便
- S・・・失禁
- ✖️・・・排尿、排便なし
- ◉s・・・便失禁
「一覧表にしたもの」に詳細を説明しています。参考にしてください。
連絡帳があれば、連絡帳に記載します。でも、連絡帳に記載と同時に帰宅時に口頭でも家族様に報告します。
なぜなら、家族様は連絡帳を必ず確認するとは限らないからです。
「そんなこと聞いてなかったよ」と言われる可能性があります。
自分以外の職員が申し送りのある利用者様を送迎する場合、その運転手に申し送りをしておきましょう。
あなたが送迎に出る場合は、送迎前に連絡帳を確認しておくと申し送るべき排泄状況を把握できますよ!
【他人には言えない】尿トラブルの話
高齢者同士の会話でおしっこに関する話一つでも20代、30代では違うことが分かります。
高齢になるとよく起こる排尿トラブル
- 尿失禁
- 排尿困難
- 頻尿
- 乏尿
- 残尿感
- 尿意の喪失
高齢になると排尿トラブルが出てきます。
「最近、おしっこが出にくい」からバルーンカテーテルという管を尿道に挿し込まないと排尿できない問題まであります。
ここでも、介護士ができるケアは
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
排泄介助時に
- 量
- 頻度
- 臭い
- 色
- 状態
を「いつもと違わないか」チェックします。
気づくか気づかないかの一つに「知識」の問題もあります。
この章では主に「尿失禁」に関して解説します。
参考程度にどんな尿失禁があるのか知識を増やしてみましょう!!
一番多い尿トラブル「尿失禁」
排尿トラブルで一番多いのが「尿失禁」です。
大きく分けて4種類も尿失禁があります。
タイプによっては「男性の方が多い」、「女性の方が多い」があります。
男女による体の最大の違いは「尿道の長さ」です。
尿失禁のある利用者様は定時でトイレ誘導する必要があります。
排泄表に基づいて介助するのをお勧めします。
尿失禁があれば、素早く適切に介助します。記録や家族様への報告も忘れずに!!
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁はお腹に力がかかる状態になるとおしっこが漏れてしまうことです。
腹圧がかかりやすい状態
- 立つ時
- 座る時
- 前屈みになる
つまり、何らかの動作するときに腹圧がかかって尿もれしやすくなります。
通常の腹圧性の尿失禁であれば尿とりパッドで十分対応できます。
デイサービスのご利用者様はほぼパッドを使用されています。
むしろ、ズボンや下着の上げ下ろしをするときに完全に便座に座る直前に尿取りパッドを取るようにしましょう。
溢流性尿失禁
排尿時に通常より長く時間がかかったり強い残尿感があったりすることが特徴です。
尿を出し切ることができないためトイレに行く回数が増えたり寝ている間に漏れてしまったりすることがあります。また、少しずつ尿があふれてくるため、漏れていることに気づきにくいということもあるようです。
切迫性尿失禁
突然強い尿意に襲われて「トイレまで間に合わない」状態です。
過活動膀胱という病気により膀胱が自分の意に反して収縮することが原因。
慌ててトイレに行くので、段差につまづいて転倒しやすくなります。
機能性尿失禁
排尿に関する機能に制限はないが、「認知症」や「ADLの低下」のためにしてしまう失禁のことです。
トイレまで行くのは問題ないが、トイレの使い方がわからない。あるいは、下肢筋力の低下のためにトイレまで間に合わない。
中には尿意(トイレに行きたいという感覚)がなくなる方もいらっしゃいます。
こんな方は定時でトイレの声かけをします。中には「今、トイレは行かない」と言われるかもしれませんが「昼食前なのでトイレに行きませんか?」と少し強引に誘うことも必要です。
その他、排尿に関して見ておくべきこと
ご利用者様の既往歴(病歴)の影響で、見ておくべきことがあります。
- 排尿の濁り具合(特にバルーンカテーテルされている方)
- 排尿の色
- 血液が混じっていないか
- 排尿の量
バルーンカテーテルをされている利用者様が珍しくなくなっています。
バルーン内を見ると沈殿物があったり、帰宅前には尿量を測らないといけなかったり・・・
普通の介助以上のことをしないといけない場合があります。
初めて介助する利用者様や利用されて間もない利用者様の介助方法については十分調べておきましょう。
【排便の変化は体調の変化⁇】排便の状態を確認しよう
排便で重要なポイントは
- 排便の状態
- 排便の量
- 排便の頻度(周期)
利用者様の中には1週間ぐらい便秘で悩んでいる方もいらっしゃるぐらいです。
毎回、家族様は便秘のお薬をいつにどの程度の量を服用させればいいか迷うぐらいです。
なぜ、便秘薬を服用してデイサービスに来るの?
「デイサービスで多量に排便してきてほしいから」です。介護度が高くなればなるほど、自宅で便失禁があった時の家族様の介護負担は大きなものになります。まず、汚れた下着類や布団類を洗う場所を確保するだけでも苦労。そこで、デイサービスで排便が出るように家族様は便秘薬を服用させます。
デイサービスなら、自宅よりも排便処理がしやすくなります。少なくとも、介護士の仕事は排便処理も含まれます。なぜなら、それをすることで家族様の介護負担の軽減になるからです。最後に「今日、排便ありました」と報告を貰えたら家族様は一安心。これで、便失禁した時の大変な思いをせずに済みます。
排便は健康管理の意味もありますが、家族様の介護負担軽減でも重要な介助です。排便のある/なしの報告は家族様にとって重要な情報なのです。
排便でも重要なのは排尿時と変わらず
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
特に、排便のある・なしの報告は家族様にとって重要な情報。
こちらに関しても予め記号を決めて排泄表に記入できるようにしておくと便利です。
排便の量と状態についての目安。
記録の仕方についての問題になってきますが、排便の量や状態は個人の主観に左右されやすくなります。
Aさんが多量に感じているものもBさんは中量と感じている。
結局のところ、量や状態の記録は介助する人の主観になります。
しかし、ある程度の目安があれば、他のスタッフや家族様にイメージのずれを少なくして報告することができます。
私の介護士歴での培った主観的な基準ですが、参考程度にしていただければと思います。
排便の量の基準
- 微量・・・握り拳大以下
- 少量・・・バナナ半本
- 中量・・・バナナ1本分
- 多量・・・バナナ2本分以上
職場で明確な基準があればそちらのルールに基づいて記録します。
これはあくまでも私の判断基準です。
ちなみに、自宅で便秘薬を服用されてデイサービスで超多量に排便があった場合は利用者様の様子に注意します。
多量に排便があった後に、血圧が変動して利用者様の意識レベルが下がる場合があります。
排便の状態
排便状況で必ず確認してほしいのが排便状態です。
特にノロウイルスなどが流行りやすい1月〜2月にかけて排便状態で利用者様の健康状態の判断材料にするからです。
排便状態については以下を参考にして下さい。
排便状態 | 画像 | 水分量 | 備考 |
普通便 | 通常 | 健康体の排便 | |
下痢便 | 多い | お腹の調子が悪い | |
軟便 | 多め | お薬の影響などで柔らかめ | |
水様便 | 超多い | ほぼ水。何らかの体調不良を抱えていると見なす。 | |
硬便 | 少 | 水分が足りていない。肛門を傷つけて出血することもある。 |
下痢便、水様便の後は相当水分が失われています。水分補給の声かけを忘れずに。
さらに硬便も水分が足りていません。カチカチで肛門を傷つける可能性があります。
できる限り、水分摂取を促します。必要であれば水分摂取の介助をします。
便秘で介護士ができる4つの支援
便秘の時に介護士ができる支援は4つあります。
絶対やらないでほしいのは「摘便」です。
摘便は看護師に依頼すべき、介護士がやってはいけない行為です。
摘便をすることで肛門などを傷つけてしまう可能性もあります。
ウォシュレットで肛門を刺激する
排便が出そうで出ない時、ウォシュレットで肛門部分を刺激することで排便を促すことができます。
目安の時間は5〜10秒です。10秒以上当てると必要な粘液まで流してしまって皮膚が傷つきやすくなります。
いきなりやるとビックリするので、実施前に必ず声かけをしましょう。
「の」の字にお腹をマッサージする。
小腸を通った後の食べたのものが通る順番
- 上行結腸(右下)
- 横行結腸(上部)
- 下行結腸(左上)
- S字結腸(左下)
- 直腸
つまり、お腹を正面から見て「の」の字にマッサージをすると排便を促せます。
親指を除いた4本の指で、40秒程度で回り切るぐらいのスピードでおへその周りをさすります。
食後1時間以内は胃腸が活発に動いています。消化の妨げになるのでこの時間帯は避けてください。
看護師に報告
介護士のケアでも排便が出てこない場合があります。
- 排便肛門で引っ掛かっている。
- 硬便で肛門を傷つける可能性がある。
- 利用者様に踏ん張っていただいても出てこない。
摘便しないと出てこないかもしれません。
この場合は看護師を呼びましょう。
家族様に報告する
排便があるかどうかは家族様にとって1番の問題です。
特に、認知症でデイサービスでの出来事を話しできない利用者様の家族様はデイサービスからの報告が唯一です。
日中に排便があってもなくても報告しましょう。
家族様に報告が必要な場合
- ご自分で排便状況を管理できない
- 家族様から排便状況の報告の依頼がある
- 腹痛などの訴えがある場合
- 便秘薬服用の申し送りがある
- 下痢便や水様便などの状態の場合
利用者様のいつもと違う状態があれば、全て家族様に報告します。
排泄介助の回数が多くなる分、排便の異常にも気付きやすくなるのが介護士。
気づき、記録して、報告するのが介護士の役割です。
まとめ
高齢になると老化や病気のために排泄に関して何らかのトラブルを抱えるようになります。
尿失禁や便秘は、ほぼ全ての利用者様が抱えている問題と思っても差し支えないです。
排尿、排便は利用者様の体の状態を把握する貴重なサインです。
排泄介助しながら利用者様の健康を守るために
- (排泄の変化に)気づく
- 記録する
- 報告する
この3つが介護士ができるケアです。
気づくためには「高齢になると、どんな体になるのだろうか?」と研究する必要があります。
高齢者の体や心を知識として勉強し続けること、そして現場で排泄時の様子観察を続けることが利用者様の「いつもと違う」に気づく秘訣です。
少なくとも、この記事を読んだあなたは排泄介助に入るときは
- 量
- 頻度
- 臭い
- 色
- 状態
が、「いつもと違う部分はないかな?」と異常を探す姿勢になることでしょう。
利用者様の生活を守れる介護士は「気づくことが多い」介護士です。
アンテナを立てて、いつもとの違いを見つけていきましょう!!
利用者様の「いつもと違う」部分を見つけるには現場での実践が重要です。
それだけでなく、「知識」の量、深さも気づく要素の一つです。
知ってることは気づきのきっかけになります。
排泄介助の仕事をざっくり知りたい方は以下の記事をご覧ください!!
介護の仕事は知ってるだけで楽になる場面が多々あります。
介助のルールは施設によって違いますが、基本的な介助技術はどこへ行っても変わりません。
本ブログでは、新人介護士やこれから介護士を目指す方がゆる〜く介護士の仕事を続けられるように介助に関する知識をサポートしています。
知っているだけで、楽になる場面があるのだから。
入所施設で働いていて休みの取りやすいデイサービスで働きたい方はこちらの記事もご覧ください。
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