結論:誰よりも先に排泄介助に入って、利用者様の排泄サイクルを把握しよう!
排泄介助は利用者様の体に直接触れる仕事です。
直接体に触れる仕事であるが故に、あなたの体に負担がかかるだけでなく気疲れしやすい仕事でもあります。
排泄介助で気疲れしやすいこと
- トイレ拒否される。
- 尿臭、便臭するので声かけするとリハビリパンツ内が排尿や排便でいっぱい。
- トイレ介助のつもりが全ての着替えをする羽目に。
だからあの時にトイレの声かけしたのに・・・
この状況ってあなたも利用者様にとっても不幸な状況ですよね?
利用者様だって、リハビリパンツ内が排尿、排便まみれな状態って気持ちが悪いし「ああ、失敗してしまった」って自尊心に傷つけることになります。
そこで重要になってくるのが「声かけのタイミング」です。
前提条件として、「トイレに行きたい時」がトイレの声かけをするベストタイミングです。
利用者様がトイレに行きたいタイミングって分からないんじゃないの?
そう思うかもしれません。
でも、ほとんどの利用者様がいつトイレに行きたいと思うか予測が可能です。
利用者様がトイレに行きたいタイミングはほぼいつも同じ。
1時間以内は誤差の範囲内です。
利用者様がトイレに行きたいタイミングがわかると、訴えがある前に声かけすることができます。
「今、ちょうどお願いしたいと思ってたところなのよ」
トイレ介助は「汚い、だから人には頼みにくい」と利用者様は思っているので頼みにくい。
あなたにお願いする時には、散々頼もうかどうしようか悩んだ上で声を出しているのです。
利用者様の訴えがある前にトイレに誘うのはいわゆる「ホスピタリティ」と言えます。
タイミングを考えるだけで、利用者様のあなたへの信頼感は鰻登りです。
利用者様をトレイに誘うベストタイミング
何気なく入っている排泄介助ですが、実は同じ労力でも声かけするタイミングで利用者様が不満に思うことがあれば、感動されることもあります。
あるいは、普段はトイレ拒否が強い方もタイミング次第で「トイレに行くわ」と言ってもらえるようになります。
全ての利用者様が「今、トイレに行きたい」と思っているわけではありません。
中には、「トイレに行きたい」という感覚のない方もいらっしゃいます。
そんな方でも、清潔を保持するために「トイレ誘導の時間」が設けられているのです。
一般的には、トイレ誘導の時間に声かけしますがタイミングはそれだけではありません。
「利用者様の訴えの時間を予測して声かけをする」は利用者様を感動させられますが、実はできるようになるまで時間がかかります。
利用者様の排泄サイクルを把握する必要があるからです。
まずは「トイレ誘導の時間」に声かけするところから「ベストタイミングでトイレに誘う」スキル獲得は始まります。
排泄表を参考にする。
どこの職場でも「排泄表」を見ながらトイレの声かけをします。
なんで排泄表を見ながらトイレ介助するの?
- 「トイレに誘えていない」利用者様をなくす。
- 排尿の回数を確認できる。
- 何時間おきにトイレに行っているのかを把握できる。
- 拒否が多いタイミングを把握できる。
- 時間内に排泄介助を終わるために、優先順位をつけやすい。
- 排便の回数や状態を確認することができる。
デイサービスでは時間内に排泄介助を終わらせないといけません。
短時間で排泄介助を終わらせるには「優先順位」のつけ方がポイントとなります。
排泄介助の管理の仕方については以下の記事をご覧ください。
話が脱線しましたが、排泄表には利用者様がトイレの声かけするベストタイミングのヒントが記載されています。
- 鈴木さんは昼食前後にトイレに行くことが多い。おやつ後は排尿なくて、帰宅前は拒否されている。
- 山本さんは昼食後は誘うけど排尿がない。おやつ前に排尿が出て、帰宅前には排便が出ている。
- 佐藤さんは、朝とおやつ後に排便がある。帰宅前にも排尿されている。
- 中村さんは、昼食後とおやつ後に排尿がある。帰宅前は排尿がない。
もちろん、日によって若干の違いがあります。しかし、数日分を照らし合わせるとトイレへ行く時間に重なる時間帯があります。
その時間帯が「利用者様がトイレに行きたい時間」、つまりトイレのベストタイミングになります。
排泄表は利用者様の排泄データが詰まっています。
利用者様の訴えがあったとき。
これは、今日介護士を始めた人でも分かることですね。
「トイレに行きたい」という訴えがあると言うことは、利用者様が「おしっこが出そう」と思っているタイミングです。
訴えがあったら、介助に入ります。
佐藤さん、10分前にもトイレに行きましたよ!
中にはそんな利用者様もいらっしゃいます。
特に男性の場合は、前立腺の肥大化で排尿が出にくくなっています。
10分前にトイレに行っていても、訴えがあれば介助に入ります。
介助に入ると意外と排尿があります。
なくても、利用者様の「トイレに行きたい」という思いに応えることになります。
口腔ケア等、用事のあとに必ず声かけをする。
口腔ケア等の用事の後に声かけするのもベストタイミングです。
口腔ケア等の用事の後で声かけするメリット
- トイレ拒否の多い利用者様でも流れでトイレに誘うことができる。
- お席からトイレまで歩くのは億劫でも、洗面所からなら利用者様の負担なく歩くことができる。
- 口腔ケアで職員がお世話しているので、利用者様が「負担をかけて」と思いにくくなる。
昼食後にトイレ誘導の時間を設けているのは、行っていただきやすいためです。
特にトイレ拒否があったり歩くのが億劫な利用者様にとって、歩く距離が短くついでに行けるタイミングである「口腔ケア後」はベストタイミングです。
トイレ拒否のある方の声かけで、私も口腔ケア後のタイミングを利用しています。
尿臭、便臭があれば声かけする
これは、ベストなタイミングというより絶対にトイレに行っていただけないといけないタイミングです。
臭いがある時点ですでにリハビリパンツ内は排尿、排便だらけになっている可能性があるからです。
尿臭、便臭があるのに声かけしないとこんな悪いことがあるよ!
- 近くの利用者様が不快に感じる。
- 尿路感染や皮膚の状態の悪化を招く。
- ズボンやパッチまで汚れてしまう。
- ノロウイルスやコロナウイルスなど感染症がを広げてしまう。
- 利用者様の自宅での生活が難しくなっているという問題に気づけなくなる。
そんな方に限ってトイレ拒否が強い方が多いです。
ズボンが濡れているほどの尿失禁でも「これはお茶こぼしただけ!!」って言われると何も言い返せませんね。
こんな場合は、強引にでもトイレに誘う必要があります。
この利用者様だけの問題ではないからです。
明らかに尿失禁、便失禁のある人のトイレへの誘導の仕方
- 車椅子に座っていただいてトイレまで誘導する。
- 「トイレ」というワードを使わずにトイレまで誘導する。
- 別の目的を伝えて、トイレまで誘導する。(塗り薬を塗りたいなど)
- 先輩や上司に手伝ってもらう。
- そのままにすると「痛くなりますよ」と伝えて誘う(行かないことへのデメリットを伝える)。
やはり、ベストなタイミングは尿失禁、便失禁がある前です。
普段から拒否されがちな利用者様には、拒否されない「トイレの声かけの方法」を実践してください。
トイレ拒否って新人介護士さんが最初にぶつかる壁の一つですね。
【最高のホスピタリティ】利用者様の訴えの時間を予測して声かけする。
利用者様がいつトイレに行くかを予測するのって難しくない?
高齢者のトイレの行く時間を予測するのは簡単よ!
トイレ介助に入る回数を増やすだけだからね。
うそー!!
トイレ介助に入る回数を増やすだけで利用者様がトイレにいつ行くか予測できる理由は利用者様がトイレに行きたいタイミングが決まっているからです。
高齢になればなるほど、普段の習慣を大きく変えたくないという思いを持つようになります。
今までの人生経験からその習慣が「自分にとってのベスト」と思っているからです。
トイレに行く時間も、「おしっこしたい」と思っていなくても「この時間にトイレ行かないと気持ち悪い」と思っています。
習慣とは「そうしないと気持ち悪い」ことなのです。
いつもと違う時間にトイレに行く例外
- 腹痛。
- 下痢。
- すでに尿失禁、便失禁がある。
- 下剤や利尿剤を服用している。
- 吐き気がある。
体調や服用されているお薬の変更でいつもと違うタイミングでトイレにいかれることもあります。
そういった例外以外はほぼ、毎日同じようなタイミングで利用者様はトイレに行かれます。
そのタイミングを把握するには「トイレ介助に入る回数を増やす」のが一番の近道です。
体で覚えたことは忘れにくくなります。
トイレ介助に入るときに、時間を見る習慣をつけておきましょう!
トイレに誘うタイミングもホスピタリティ
サービス業を携わっている人にとって、なくてはならないのがホスピタリティです。
「ホスピタリティ」の語源はラテン語のhospitālis(お客様の保護)といわれていますが、一般的には「心からのおもてなし」「深い思いやり」という意味で捉えられています。
東洋大学HPより引用(https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/business/hospitality/)
おもてなし?深い思いやり?なんだかよく分からないですね。
サービスとホスピタリティの違いを見ると理解しやすいです。
サービスとホスピタリティの違い
- サービス・・・利用者様も自覚している「こうして欲しい」実際にとあなたに求めているものを提供すること。
- ホスピタリティ・・・利用者様も自覚していない、あるいは自覚していても言い出せない「こうして欲しい」ことを介護士が感じてるを解決すること。
つまり、あなたにして欲しいことを利用者様が訴える前に提供することです。
介護士が簡単にホスピタリティを発揮できる場面の一つが「排泄介助」です。
利用者様がトイレに行きたいタイミングで声かけすると感動してもらえる。
あなたが今欲しいと思っているものを、あなたが言う前に恋人からプレゼントされるとどう感じますか?
おそらく、感動しますよね。
「私のことをよく知ってくれていたのね」って。
トイレの声かけも同様に、利用者様が「トイレに行きたくなってきたな」と思った時点で声かけすると利用者様から感動されます。
訴えがある前に声かけするのは利用者様へのプレゼントなんです。
なぜ、トイレに行きたいタイミングで声かけすると感動してもらえるの?
- 自分から「トイレに連れて行って」というのが恥ずかしい。
- 「こんな忙しいのに申し訳ない」と気を遣われている。
- 「自分のことを分かってくれている」と思うから。
利用者様は求めていることをスピーディーに解決してもらえると感動します。
感動していただけるタイミングを測るには、時計を見ながらトイレ介助に入るのがベストな手段です。
時計を見ながら仕事をする習慣は介護士には必須です。
【声かけも介助力】新人介護士でもベストタイミングで声かけできるようになるには、「失敗」して拒否されても誘い続けること。
拒否の強い利用者様でも上手くトイレの声かけできるベテラン介護士とあなたの違いは経験です。
実は、声かけがうまいあの介護士も働き始めは利用者様のトイレ拒否に悩んだ時代がありました。
でも、めげずに声かけをし続けたおかげで「トイレに行ってもらえる」声かけの方法を何個も貯金しているのです。
経験年数が長くても、トイレの声かけが下手くそな人は存在します。
もしかしたら、あなたの職場でも・・・・
そんな人がやっているのは、トイレ介助を避けているか利用者様の様子観察ができていないからです。
積極的にトイレ介助に入ることで得られるもの
- 拒否されても、心が折れにくいメンタル
- 「NO」を「YES」に変える言葉の数
- 利用者様の行動パターン
- トイレに行ってもらいやすいタイミング
- 初回の利用者様でも恐れずにトイレ介助に入られる。
介助においてセンスは経験した数です。
新人介護士であるうちは、先輩介護士や上司からの支援が得られやすい。
新人だからこそ、誰よりも先に数多くのトイレ介助に入りましょう。
不安だったら、先輩や上司に助けを求めていいんです!
「トイレに行きたくない!!」利用者様の言われるままに諦めるのはホスピタリティではない!?
トイレに誘うベストタイミングは利用者様が「トイレに行きたい」と思うタイミングです。
ただし、必ずしもその日のうちにトイレに誘うベストタイミングが来るとは限りません。
「誰かに言われてトイレに行く」というのは介護の必要な高齢者であっても「普通の状態」ではありません。
今まで誰かに言われるまでもなく、自分でトイレに行っていたからです。
利用者様がいつまでも「トイレに行かない」と言っているからと諦めてしまうのはホスピタリティではありません。
強引に誘わないといけない時もあります。
気持ち良くなるためにデイサービスに来ていただいているのに、気持ちが悪いまま自宅に帰す。
これは、ホスピタリティとは呼べません。
自宅には家族様もいらっしゃいます。
ただでさえ利用者様の普段の介護で疲れが出てきているのに、デイから帰ってきてトイレ介助。
これでは休まるものも休まりません。
デイサービスの目的は「利用者様の介護の負担を軽くする」ことでもあるのです。
拒否のままにトイレ介助に入らないデメリット
- リハビリパンツ内に多量の尿・便失禁。
- 尿路感染症などの病気の発生。
- 肌トラブルの増加。
- 排泄状況が把握できなくなる。
- 尿臭、便臭で周囲の利用者様を不快な思いにさせる。
- 家族様の介護負担が大きくなる。
基本的には、利用者様に「今、トイレに行くかどうか」の選択をしてもらうのは大切です。
でも一日全くトイレに行っていただかないという選択はありません。
強引にトイレに誘うデメリットより、全く誘わないデメリットの方が大きいです。
【新人でも実践できるベストタイミングでの声かけ3ステップ】利用者様の排泄サイクルを把握しよう!
どの時間帯がトイレの声かけのベストタイミングか?
予測するのが難しい理由は「利用者様によって、トイレに行きたい時間が違うから」です。
利用者様自身も「私がいつトイレに行きたくなるか職員にもわからないだろう」と思っています。
だからこそ、「いつ利用者様がトイレに行きたくなるか」を予測する価値があります。
あなたが「汗だくだからそろそろお風呂入りたいな」と思った瞬間に、家族から「今、お風呂沸いたところだから入っておいで」と言われたら「ありがたいな」と思います。
それは、その家族があなたのことを理解してくれているから。
今求めていることを他の誰かが先持ってやってもらうと感動します。
トイレの声かけも同様です。
利用者様が「トイレに行きたい」と思ったタイミングで、訴えがあるより先にあなたが声かけすると「私のこと分かってくれていたのね。」と感動されます。
それには、利用者様の排泄サイクルを把握しましょう。
ただ、トイレ介助に入る回数を重ねればいいのではなく「○○さんは、いつも何時ぐらいにトイレに行っているのだろうか?」と気にすることです。
【ステップ1】利用者様がトイレに行かれたら時計を見る。
実は、利用者様はトイレに行きたいと思い時間は日が変わっても大きくは変わらないのです。
ほぼ、同じような時間帯にトイレに行きたくなるのです。
習慣によって体がそうなっているからです。
だから利用者様がトイレに行かれたら「今何時かな?」って時計を見てください。
ほとんど同じ時間にトイレに行っているのが分かります。
積極的にトイレ介助に入らないと、利用者様の排泄サイクルは分かりません。
【ステップ2】排泄表でトイレに行かれるタイミングを確認する。
利用者様も人間なので、徐々にトイレに行きたくなる時間帯が変わってくる場合もあります。
そこで参考にしてほしいのが「排泄表」です。
排泄表には、トイレ誘導する時間帯や実施状況だけでなく拒否されたかどうかまで記載されています。
また、トイレに行ったけど結局排尿、排便がなかったタイミングも分かります。
排泄表は利用者様の排泄サイクルを知るデータです。
排泄表を「紙」でデータとして残していない職場もあります。
その場合は、自分から積極的に排泄介助に入るしかありません。
実際に介助に入る情報の方が定着しやすいし、排泄表に分析もしやすいです。
【ステップ3】利用者様から「トイレに行きたい」と言われやすい時間帯を覚えておく。
毎日、積極的にトイレ介助に入っているとその利用者様がトイレをよく訴えられる時間帯が分かってくるようになります。
そこまで行くと、チャンス。
覚えるまで介助をしたら、あとは訴えがある前に声をかけて介助するだけです。
訴えがある前に声かけをするメリット
- 介助量が少なくて済む。
- 利用者様に感動される。
- 利用者様を観察するポイントが分かるようになる。
- 他の職員より利用者様の様子に詳しいので何かあれば尋ねられる。(頼りにされる)
- 時間を意識して介助に入れるようになる(介助時間の短縮)
排泄サイクルを把握できるようになると、利用者様に喜んでいただけるだけではなくあなたの介助時間も短縮できるようになります。
何よりも利用者様の理解が深まると、その他の入浴や食事といった介助もやりやすくなります。
介助方法を決めるのも利用者様の情報に基づいているからです。
時間も意識しながらトイレ介助に入ってください。
まとめ
ベストタイミングで利用者様を感動させるのは新人介護士でも達成可能なことです。
なぜなら、介助に入った回数で少しずつ利用者様にとってのベストタイミングが分かるようになるからです。
トイレ介助を何度もこなすことで、利用者様のADLだけでなく「なぜ、今トイレに行きたくないのか?」とか「そのタイミングで、トイレに行きたくなる理由」も分かるようになります。
時計を見ながら失敗を恐れずにトイレ介助に入る。
それを続けることで「利用者様がトイレに行きたい」時間を予測することができるようになります。
拒否が強くて自分の力だけでは難しい時は先輩や上司に協力してもらえれば大丈夫です。
利用者様が求めていることを、利用者様が訴える前にあなたが先に声かけすると「私のこと理解してくれている」と感動されます。
あなたにとっては当たり前になっている仕事でも利用者様にとっては「私って大切にされている」と思えるほど大きな出来事です。
そして、排泄介助の回数をこなすだけではなく利用者様の排泄サイクルも把握することで排泄のベストタイミングの変化にも気づけるようになります。
利用者様の排泄サイクルに気づけるようになるには時計を見ながら、時間を意識して介助に入ってください。
介護の現場においてスピードは優しさです。
スピード感を持って仕事をするには都度時計を見る癖をつけるのが近道です。
とはいえ排泄介助はタイミングだけが重要なのではありません。
そこに介助力が伴っていなければいけません。
トイレ介助ができるようになると、入浴介助もできるようになりますよ!
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