結論:利用者様の「なんでトイレに行かないといけないの?」、「なんでトイレの中までついてくるの?」を解決する。
トイレ介助にも慣れてくると次に立ちはだかる問題が「トイレ拒否」の利用者様への声かけ。
- トイレの声かけをしても動いてくれなくてうんざり。
- トイレ誘導を終わらせないといけないのに声かけに時間がかかってもどかしい。
- いつも同じ利用者様のトイレ誘導が残ってしまう。しかも、先輩や上司からどやされて憂鬱。
特に帰宅前にトイレに行ってもらえないと、リハビリパンツやパットが排尿、排便でボトボト。
家族様をがっかりさせたり、不信感を持たせる原因になります。
トイレ拒否を解決するポイントは「なぜトイレ拒否されるのか?」を解決することです。
拒否する利用者様は「自分でできる。」あるいは「トイレの中までついて来られたくない」と思っています。
認知症の方でも「あなたがそういうのならトイレに行こうかな」と思ってもらえる声かけをする。
そうすることでトイレ拒否に悩む日々にさよならすることができます。
排泄介助拒否の理由を考える【トイレはプライベート空間】
トイレの声かけをしても断られる。それには理由があります。
排泄介助を拒否する理由を解決しない限り利用者様がトイレに行っていただくことはできません。
なぜなら、トイレは「プライベート空間」の中心だからです。
「プライベート空間」とは「他人には入って来て欲しくない自分だけの領域」。
プライベート空間にこそ排泄介助を拒否する理由があります。
プライベート空間の考え方
その一つの考え方が「プライベート空間」です。
「プライベート空間」とは自分以外には入って来て欲しくない空間です。
プライベート空間にはいくつかの段階があります。
誰が入って来てもいい公の空間。仲間は入って来ていい仲間の空間。自分以外誰にも踏み込まれたくない個人の空間です。
何年も付き合いのある親友といえども個人の空間に無断で侵入されるのは恥ずかしいのです。
排泄は自分の「汚いもの」を出す空間。一般的に自分以外の誰にも入って来て欲しくない空間です。
排泄介助に入る際は、「個人の空間」にお邪魔しているという感覚を持って介助に入るのが「拒否される理由」を見つける基本的な考え方です。
仲間でも入って来て欲しくないプライベート空間。排泄介助の場合はこんな感じ!!
もっとわかりやすく例えるなら、風邪で体調が悪い時に「兄弟にトイレを手伝われる」です。
体調が悪くてもトイレにまで入られるのは流石に恥ずかしい。
それはトイレ個人の空間、誰にも入ってもらいたくない空間だからです。
認知症、寝たきりの利用者様でも無断でトイレに入って欲しくないのです。
排泄介助をする際は「利用者様のプライベート空間に入らせてもらう」という意識を持つのが羞恥心の配慮をする第一歩です。
「羞恥心の配慮」が利用者様のプライベート空間を守ることになる。
排泄介助を断られる原因が「羞恥心」。
それを解決するのがこれからも排泄介助に入らせてもらう基本的な配慮です。
特に初めて排泄介助させてもらう利用者様はあなたにまだ信頼関係を持てていません。
トイレの空間では下半身を出しています。
あまりにも恥ずかしがる様子があればブランケットで局部が見えないように配慮しましょう。
その他「羞恥心に配慮した排泄介助」は以下の通りです。
ここで注意して欲しいのは、「とは言っても必要な人には排泄介助しないといけない」ことです。
トイレの声かけの仕方やあなたの態度で羞恥心を最低限に抑えることはできます。
感覚としてあなたが利用者だった場合でされて嫌なことは利用者様も嫌ということを忘れないでください。
【未前に拒否を防ぐ】トイレの誘い方の基本
利用者様にトイレの誘い方で拒否されるかどうかが決まります。
私が実践している誘い方は以下の通りです。
これらのいずれかを使う場合もありますし、複数使う場合もあります。
利用者様の状態に合わせて使い分けます。
たとえば、トイレ介助され慣れている利用者様に対しては「今からトイレに行きましょう」という声かけをしても問題ありません。
- 「おトイレに行きたい」という感覚がない。
- 自分で問題なくトイレに行けると思っている。
- トイレに行くのがめんどくさい。
と思っている利用者様に「トイレ」というワードを使って誘うのは厳禁です。
なんで、あんたに言われてトイレに行かないといけないの?
と思っているからです。「トイレぐらい自分のタイミングで行くわ」と思っています。
それを「今トイレに行かないといけない」と利用者様に思わせる声かけが失敗しないトイレの誘い方のポイントです。
今トイレに行くメリットを伝える。
この声かけは認知症の方やトイレに行くのがめんどくさい方に有効な誘い方です。
ただトイレに行きましょうだけでは、「なんであんたに言われてトイレに行かないといけないの?」と思われます。
そこで「なぜトイレに行かないといけないのか?」理由を説明することで利用者様を納得させます。
理由を説明する誘い方のサンプルトーク
- 帰る前なのでトイレに行きましょう。
- トイレが空いている今のうちにトイレ行きましょう。
- 「私一人だけだと寂しいのでトイレまでついて来てくれませんか?」とさりげなくトイレ介助をしてしまう。
人間、納得しないと動きません。納得すれば認知症の方でも動いてくれます。
それは声かけに選ぶ言葉だったり、声かけのタイミング、あるいは声かけする人であったりします。
理由をつけて誘うことのはトイレにお誘いする基本になります。
「トイレ」というワードを使わない。
全ての利用者様が「トイレに行きましょう」と言って行ってくれるわけではありません。
「自分で行けるのに、なんであなたに言われて行かないといけないの?」と思う利用者様もいるのです。
「自分にはトイレ介助が必要」と理解できてない認知症の方もいるのです。
この場合、あえて「トイレ」という言葉を使わないで誘うことで拒否される確率を下げることができます。
「トイレ」というワードを使わない誘い方
- ちょっとついて来てくれませんか?
- デートしましょう。
- 確認して欲しいことがあるので来てくれませんか?
その時に「どこへ行くの?」と聞かれる場合もあります。
利用者様との関係性によってかける言葉は変わりますが、私は「秘密です❤︎」とか「ちょっとそこまで」とかはっきりと場所を言わないで誘うと成功しやすくなります。
利用者様になんとなくついて来てくれたらこちらのもの。
あとはトイレまで誘導して介助するだけです。
まずは、トイレの中まで来てもらうことを考えましょう!!
トイレの近くを通るタイミングで誘う。
排泄介助を断られる理由の一つは「トイレまで歩くのがしんどい」という方もいます。
足が弱っている利用者様にとって座っているところからトイレまでの距離が長いと、その距離を歩くだけで苦痛です。
トイレのためだけに「歩く」という苦痛を味わいたくないのです。
そこで、何かをしに行くついでにトイレに行くというものです。
例えば、昼食後であれば口腔ケアを実施します。洗面所から近いあるいはお席まで帰る途中でトイレがあれば必ず誘いましょう。
一旦お席に戻ってからでは拒否される確率が上がります。
もし、そのタイミングでトイレがいっぱいであればトイレ近くに椅子を用意してお待ち頂きましょう。
トイレの近くを通るタイミングの具体例
- 口腔ケア後
- 入浴後の移動の際
- レクリエーション開始、終了前後の移動
- なんとなくトイレの近くを通りかかった時
- リハビリ後
比較的トイレ拒否の多い利用者様がトイレ付近を通ったら声かけるチャンスだと思って下さい。
その機会を逃すとその日は二度とトイレに行かれないかもしれません。
「トイレ誘導」をする時間でなくても、行ける時に行ってもらいましょう!!
トイレの声かけするタイミングを極めるとトイレ拒否を防ぐだけでなく、利用者様を感動させることができます。
一通りの声かけをしてもダメなら他の職員に依頼する。
介護職が仕事しやすい理由の一つが全てあなた一人で解決する必要がないことです。
あなたの声かけではどうしても拒否され続けるのであれば他のスタッフに助けを求めることができる。
人を変えれば案外とあっさりトイレに行ってくれます。
その時、ただ見ているだけでなくそのスタッフの誘い方をあなたもマネできるように観察します。
他のスタッフの声かけを観察するポイント
- 使う言葉
- 声のトーン
- 表情
- 利用者様の話の聴き方
- 利用者様の体への触れ方
実は私もトイレ拒否する方の声かけは苦手でした。
これを克服したのは、先輩の声かけをマネしたから。
最近、介護士を始めたばかりの方は特に先輩のマネをすることで今まで拒否されていた利用者様へのトイレの声かけが成功するようになります。
マネるは「学ぶ」ことと同じなのです。
仲の良い利用者様とセットで声かけする。
デイサービスでは利用者様同士で友達になります。
あなたも高校生の時にお友達がトイレに行くからあなたもトイレに行くという経験をしませんでしたか?
利用者様も同じように、お友達をトイレに誘うと誘いたい利用者様も一緒にトイレに行ってくれます。
その仲のいいお友達が私たちの仕事に理解のある方ならこちらのもの。
その利用者様からも声かけしてもらうと成功する確率が上がります。
(仲のいいお友達が声かけすると)
琴音さん、トイレに行きませんか?
トイレないから行かない!!
あんた、空いているうちに行っとき。
私も一緒に行くから。
アリスさんが言うやったら行っとこうかな?
これに関しては、普段の利用者様同士の関わりを見ている必要があります。
どの利用者様とどの利用者様が仲がいいのか、意識して見ておきましょう。
どうしてもダメなら家族様に報告して謝罪する
声かけの仕方やスタッフを変えても全くトイレに行ってくれない時があります。
あまり強引に声かけしすぎると・・・・
もうこんなとこくるか!!
とデイサービスに来られなくなるかもしれません。
そんなことになると本末転倒。
どうしてもトイレ介助させていただけない場合は、帰宅時に家族様に報告して謝罪します。
拒否が強くて排泄介助できなかった場合の謝罪サンプルトーク
- 何度か入浴の声掛けをしましたが、ご本人「・・・・」とおっしゃってできませんでした。大変申し訳ございません。
- 職員入れ替わりで声掛けしましたが、ご本人の拒否強く介助できませんでした。
- 私たちの力不足で今日はトイレのお手伝いできませんでした。大変申し訳ございませんでした。
それでもやはりデイサービスにいていただいている間に介助をするのが基本です。
トイレ介助は家族様にとって負担になるからです。
デイサービスの存在理由の一つが「家族様の介護負担を減らす」です。
家族様に報告して謝罪するのは最終手段です。
利用者様に寄り添った排泄介助【声かけの前から始まっている】
利用者様が気持ちよく排泄介助を受けるには、介護者であるあなたの配慮が必要です。
それは、羞恥心の配慮以外にもあります。
大切なのは利用者様が納得して動いてもらえる声かけです。
排泄介助は声かけをする前から始まっています。
【配慮①】利用者様の状態把握をする。
利用者様にトイレの声かけをする前に状態確認をします。
たとえば、最後にトイレに行ってから1時間も経たない状況でトイレを拒否された場合は時間を置いてから再度声掛けします。
あるいは、体調が悪くてトイレまで歩くのが困難な場合車椅子でトイレまで移動する手段もあります。
その日の利用者様の状態に合わせて介助方法を変えるという配慮が必要です。
【配慮②】目線を合わせて利用者様の表情を見る
利用者様の状態を把握する方法の一つが「利用者様の表情を見る」です。
「目は口ほどに物を言う」と言いますが、高齢者の場合気持ちが表情に出てきます。
利用者様の表情を見てわかること
- 尿意、便意(トイレに行きたいという感覚)があるかどうか?
- 尿失禁、便失禁があって恥ずかしい。
- 排尿、排便困難で苦しんでいる。
これらのことをご自分で言えない利用者様もいます。
表情や視線から利用者様の気持ちを察することができるとあなたは「人を喜ばられる」介護士になれます。
利用者様の表情で見るべきポイント
- 目線の方向
- 目の動き
- 口角の上がり具合(下がり具合)
さらに、利用者様の仕草や動きもみて総合的に判断します。
たとえば、広角は上がっているけど目はキョロキョロしていて下半身を気にしている様子があれば尿失禁、便失禁の可能性があります。
【配慮③】ゆっくり、大きく、低めの声で声かけ
基本的に高齢になると耳が聞こえにくくなります。
「早くトイレに連れて行かないと」と焦ると聞こえにくい話し方になってしまいます。
利用者様に聞こえるような声かけは最低限の配慮です。
声かけするときは「ゆっくり、大きく、低め」の声をかましょう。
【配慮④】どこのトイレまでどうやって行くのかを伝える
トイレまでの距離は利用者様にとって重要です。
お体の状態によってはお席からトイレまで歩くのを負担に感じる利用者様もいるからです。
あるいは、認知症の方だとトイレがどこか分からない方もいらっしゃいます。
【配慮⑤】トイレに行きたくなる時間に合わせて声かけをする。
高齢者がトイレに行きたくなる時間はほぼ決まってきます。
その利用者様がトイレを訴える時間に合わせて声かけすると感動されます。
欲しいものをタイミングよくもらえる時の感動と一緒です。
【配慮⑥】尿失禁、便失禁があっても動揺禁止!
排泄介助に入ると必ず遭遇するのが「尿失禁、便失禁」の問題。
「うわ〜、便失禁かよ」と思っていると必ず利用者様にも伝わります。
尿失禁、便失禁があるのは利用者様の体が衰えて来ているから。
でも、「失敗してしまった。」という気持ちはあるので介護士のあなたは動揺してはいけません。
【配慮⑦】トイレに籠る時間がいつもより長ければ一度声かけする。
高齢者が長時間トイレにこもり続けるのはリスクを伴います。
要支援の利用者様でも急に体調が崩れる場合もあります。
高齢者が長時間トイレにこもるリスク
- 転倒
- 気分不良
- 意識喪失
- トイレが排便で汚染
- 尿失禁、便失禁に気づけない
一般的に、認知症がないお元気な方でも10分以上トイレから出て来られない状況があれば一度声かけをします。
何もなければそれでOK。
たとえば、嘔吐で苦しんでいるところをあなたが利用者様に声をかけます。
そうして、体調が持ち直すと利用者様はあなたに感謝します。
利用者様との信用を積み重ねる。
それが将来、介護度が高くなってもトイレ拒否なく声かけをする秘訣なのです。
まとめ
必要であったとしても、誰かにトイレの中までついて来られるのは、利用者様にとって「違和感」でしかありません。
そんな利用者様にトイレ拒否されないためには、あなたと利用者様との信頼関係が前提です。
- 利用者様のADL(体の不自由度)
- 普段の会話
- 1つ1つの介護の丁寧さ
普段の関わり方でトイレ拒否されなくなります。
最初はトイレ拒否のある利用者様も信頼関係を築くのがスムーズにトイレまでお誘いするコツです。
まずは、先輩の声かけの言葉をマネして「声かけのサンプルトーク」をメモに書き出すなどしてあなたの使える武器を集めてみましょう!!
「どうやって、あの人をトイレに誘おうか?」とあまり悩まずトイレ介助する未来があなたを待っています。
排泄介助において声かけは基本中の基本。
でも排泄介助の仕事は声かけだけではありません。
新人介護士がゆる〜く仕事をするためにはノウハウを学ぶのが1番の近道です。
1日の流れに合わせてどんな介助があるか覚えていくと仕事の上達は早くなります。
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