結論:排泄介助をできるかどうか不安なら上司や先輩相手に練習しよう!!
他人のトイレを手助けする。そんな仕事ができるのは介護士の仕事だけです。
でも、初めて排泄介助で利用者様の体に触れるって怖くありませんか?
排泄介助する時の不安
- 移乗、移動介助で利用者様をこかしてしまったらどうしよう?
- パッドや紙おむつを綺麗に交換できるだろうか?
- トイレ介助を強く拒否されている利用者様を見ていて「自分もできるだろうか?」、「自分もやらないといけないと思うとため息が出る」
排泄介助も時間との勝負。「臭いが・・・」と思っている暇もなく素早く介助をしなければいけません。
しかし、利用者様の動きは介護士が思っている以上に緩やか。
デイサービスで、きちんと介助していないと帰宅した時にズボンまで排尿で汚れてしまっていることもあります。
時間内に、適切に、しかも利用者様が「気持ちいい」と思える排泄介助をするには練習することが必須です。
いろんな介助方法がありますが、知っているだけでは無意味。
現場で実際に排泄介助を続けて、積み重ねることで少しずつ上手くなっていきます。
排泄介助をした後に利用者様に言われる「ありがとう」は、それまでの疲れが吹っ飛ぶほど嬉しいものです。
排泄介助はただズボンの上げ下ろしをすればいいわけではなく、排尿、排便の状態も把握しなければいけません。
慣れない間は上司や先輩にお願いして、排泄介助の練習をしたり、隣についてもらって実際に介助しましょう。
今回はざっくりと排泄介助ではどんなことをするのかイメージを掴んでいただければと思います。
【排泄介助①】排泄の管理をする。
デイサービスの利用者様には3種類のタイプの方がいらっしゃいます。
排泄に関する3つのタイプ
- 自分で問題なくトイレに行ける。
- トイレには行けるが、排泄の失敗がある。
- 「トイレに行きたい」という感覚がない。
②、③の場合、なんらかの支援が必要になります。
決めた時間になったら、「トイレに行きませんか?」と声をかけたりトイレでの介助が必要になります(おむつ介助も同様)。
デイサービスでは複数の介護士がいます。
そこで出てくる問題が「漏れ」と「重複」です。
さっき排泄介助をしたのにもう一度声をかけてしまう、あるいは誰も排泄介助していない人が出てくる。
どちらも利用者様にとって「不快」な思いをさせます。
そこで排泄に管理をします。
利用者様の排泄状況を把握したいなら排泄表を使おう!
排泄の管理で大切なのは介助するタイミングと責任の所在です。
つまり「いつ、誰が、どの利用者様の介助をしたか」明確でないと排泄の管理はできません。
そして、リーダーの記憶だけで管理することはできないと考えて下さい。
介護リーダーは排泄介助だけが仕事ではないからです。
管理の仕方はあなたの職場に合う方法で構いません。
エクセルで表にしたものを印刷して使っても構いません。また、それほど排泄介助の必要な利用者様の数が多くなければホワイトボードに対象者の名前を書いておくだけでも構いません。
その日、どのタイミングでどの利用者様を排泄介助しないといけないのか全てのスタッフが把握してもらうところから排泄介助の管理は始まります。
排泄状況の把握は利用者様の健康管理に必須。
基本的にどの高齢者も「ほぼ排便が出にくくて困っている」と考えて差し支えありません。
特に寝たきりや介護度が高い利用者様は便秘薬を服用しているのになかなか出なくて困っています。
家族様としてもデイサービスで排便が出たかどうかは、利用者様ご本人の命に関わる情報です。
デイサービスでの排泄の情報を家族様に伝えると・・・
- 排便の有無で自宅で服用する下剤の量が変わる。
- 排尿の頻度、量、色で水分をもう少し取らないといけないかどうかがわかる。
- 利用者様が病院受診をするときに主治医に報告できる。
- 排便の色や形の変化に気づくことで、病気の発見のきっかけになる。
排尿、排便は利用者様の健康状態を示すサインです。
「今日の状態はどうだろうか?」という観点で介助に入りましょう。
「あれ!?臭いが・・・」と感じたらトイレの声かけをしよう!!
利用者様の中には「トイレに行きたい」という感覚がない方もいらっしゃいます。
でも、排尿・排便は出てくるものです。すでに尿失禁、便失禁があるのにご本人は気づいていない。
そのままにしていると、利用者様の肌が荒れるだけでなく他の利用者様に「臭い!!」と不快な気持ちにさせかねません。
「なんか臭うな」と思ったら、トイレまで誘いましょう。
できれば、そうなる前にトイレの声かけができるようになるとあなたはいるだけで喜ばれる介護士に慣れます。
トイレの声かけのタイミングを極めると利用者様を感動させることができますよ!
【排泄介助②】排泄用品の把握
利用者様の状態に応じて使う排泄用品が違います。
デイサービスの利用者様がよく使われる排泄用品
- リハビリパンツ
- パッド
- 失禁パンツ
- 紙おむつ
これらのうちのいずれか、あるいは複数使われる方もいます。使い方を間違えると排泄用品の意味がなくなりズボンや服が排尿でずぶ濡れになることがあります。
パッドが折れていたために利用者様を排尿でずぶ濡れにしてしまった経験があります。
3つの排泄用品
デイサービスでよく使われる排泄用品は。
- リハビリパンツ・・・はかせるタイプの紙パンツ
- パッド・・・排尿や排便を吸収する
- 紙おむつ・・・主に寝たきりの方が使用される
さらに、よくある組み合わせは「リハビリパンツ+パッド」です。
デイサービスを利用されている方の約8割はリハビリパンツやパッドを使われています。
なんで排泄用品を使うの?
- 認知症の進行や介護度の重度化で下着類が汚れることが多くなっている。
- 失禁はないがご本人に慣れてもらうため。
- 腹圧性の尿失禁があるので布パンツの中に尿取りパッドだけを使っている。
- たまにでも、下着を汚すことで利用者様が落ち込むから。
- 退院直後で利用者様の体の状態が安定していない。
デイサービスの場合、利用者様自身のADLだけでなく家族様の意向による部分も多いです。
昼間は小さいサイズのパッドを使用。帰宅前のトイレの時に、大きなパッドに交換して帰っていただく。というような利用者様もいます。
家族様、利用者様に恥ずかしい、不快な思いをさせないために使用されている排泄用品と特徴を把握しておきましょう。
正しく排泄用品を使用しよう!!
排泄用品を使う1番の目的は、排尿・排便を外に漏れさせないことです。
排尿や排便で排便で着ている服を汚すというのはデメリットしかありません。
利用者様自身、「排泄で服を汚すなんてありえない」と今まで思っていました。
体の自由が効かなくなったからといって失禁で服を汚すのは不快で羞恥心を持たせてしまうのです。
排泄用品を使っていても、使用方法を間違っていると結局利用者様に不快な思いをさせてしまいます。
排泄用品の正しい使い方
- リハビリパンツ、紙おむつは鼠径部にスキマを作らない。
- 前後を間違わない(前、後ろがわかるようになっているものもある)
- リハビリパンツや紙おむつとパッドを使う場合はギャザー内に収める。
- 尿道、肛門部分に当たるようにする。
- パッドは折れないようにする。
よくある失敗が「パッドが折れている」です。パッドが折れていると、排尿や排便が漏れ出して下着まで汚してしまう原因になります。
腰を伸ばせなかったり、介助があっても短時間しか立位を保てない方もいらっしゃいます。
この辺は熟練度の問題もあるので、まずは立位がしっかりしている比較的介助しやすい方で練習しておきましょう。
【排泄介助③】移動、移乗介助
トイレ介助が大変なのはズボンを下ろしたり、排便後の利用者様のお尻を拭いたりすることだけではありません。
移動や移乗介助も大変です。
足の筋力が急に落ちてきた利用者様をトイレの便座に座らせたり、膝が曲がって伸びない方を車椅子からベットへ移乗するときに腰を痛める介護士も少なくありません。
正しく介助していないと利用者様と一緒にあなたも転倒してしまうかも・・・
トイレまでの移動もリハビリ!
歩行介助に関して介護士の介助方法で利用者様の負担は大きく変わります。
トイレまでの距離が長くて利用者様が途中で力尽きそうな場合、あらかじめ中継地点を設けておくと転倒させずにトイレまで歩いていただけます。
「トイレまでできるだけ歩いて欲しいのか?」それとも「歩く距離が長距離になるなら車椅子を使っていいか?」は家族様の意向によります。
しかし、歩行状態が悪くて介助しても立ち上がれなかったり、立ち上がれてもふらつきが酷ければ車椅子を使用しましょう。
ただし、いつもとは違う状態なので上司や家族様に申し送りしておきます。
トランスファー(移乗介助)は最低限の介助スキル
移乗介助は介護士にとって必須スキルです。
トイレ介助の時は移乗介助なしに介助できません。
なぜなら、便座に座る時立つ時が最も転倒しやすい場面だからです。
自立歩行されている方でも便座に座るときは介助の必要な方もいるぐらいです。
移乗介助は排泄介助だけでなく、入浴介助、送迎の時にも必要です。
場面が変わっても基本的な移乗介助のやり方は変わりません。
移乗介助に不安があれば、上司や先輩にお願いして練習させてもらいましょう。
移乗介助が上手くなるコツは介助してもらうことです。
【排泄介助④】羞恥心の配慮
排泄介助は下半身が丸裸の状態です。
しかも、家族でもない他人に見られます。
さらに排泄の失敗でパンツやズボンを汚してしまうこともあります。
利用者様は「恥ずかしい」という気持ちが前提にあります。
排泄介助はただリハビリパンツやパッドを交換すればいいのではなく、「恥ずかしい」という思いを解決しないといけません。
- 動作ごとに声かけをする。
- 素早く介助する。
- できれば同性介助。
羞恥心に配慮できていない排泄介助は、「排泄介助拒否」につながります。
知らず知らずのうちにやってしまっている羞恥心を煽る介助
「羞恥心に配慮した介助」。言葉にすると簡単ですが、実は難しい問題でもあります。
例えば、トイレの声かけをするときを振り返ってみてください。
あなたはできている?羞恥心の配慮チェック
- 完全に同性介助
- 他の人にも聞こえる声で「トイレ行きませんか」と言っていない。
- 排泄の失敗(尿失禁、便失禁)があったときに「うわ。」と思っていない。
- 利用者様が羞恥心を気にする間も無く素早く介助している。
自分だったら、「できている」と思っているでしょう。
でも、他の介護士に焦点を当てると・・・・。
琴音さん!!今からトイレ行きましょうか!!
大きな声で・・・。恥ずかしい・・・。
あんな大きな声で。
他の介護士が大きな声で誘っているのには気づくものです。そんな時こそ、自分の声かけにも振り返るべきです。
他人の声かけには敏感でも、自分が声かけするときは意外と気づきにくいものです。
利用者様にとって、他人に誘われてトイレに行くというのは気持ちがいいものではありません。
それを大きな声で声かけするのはナンセンスです。
また、トイレ介助するときに「嫌だなー」って思いながら声かけするのも利用者様に伝わります。
「そんなことまでしてもらわないとトイレに行けない。自分って恥ずかしい」とかえって利用者様に精神的な負担をかけることになります。
思っていることにも注意しましょう。
【練習してみよう】ベット上での介助は素早くが鉄則
ベット上でのおむつ交換。寝たきりで自分では意思表示しにくい方が多いです。
自分では意思表示がしにくいだけで、「恥ずかしい」という思いはあります。
下半身を長時間だした状態で介助されるのは、負担以外の何ものでもありません。
素早く介助するのも羞恥心の配慮に必要です。
オムツ介助も熟練度の世界です。上司や先輩を相手に練習を重ねていくのが素早く介助するコツです。
【排泄介助⑤】トイレ拒否対策
新人介護士がトイレ介助が嫌になる理由の一つが「トイレ拒否です。」
「トイレなんか行きたくない!!」と言っている利用者様を説得して排泄介助をするのは骨が折れます。
特に帰宅前のトイレ誘導は時間との勝負。送迎時間までに終わらせないと帰宅していただけません。
トイレ拒否のない人からトイレ介助をして結局、拒否の強い利用者様の介助だけが残る。
「誰かが行ってくれるだろう」と結局同じ利用者様だけが残る。
あっては行けませんが、どこのデイサービスでもよくある状況です。トイレ拒否のある利用者様をスマートに誘えるようになるだけでトイレ介助はスムーズになります。
それこそ、負担に感じなくなるほどに。
トイレ拒否される利用者様がなんと言っているのか耳を傾ける!!
トイレ拒否される1番の理由は「他人に関与されるのが恥ずかしいから。」
それが、利用者様の言葉となって現れます。
よくあるトイレ介助の断れ方
- 今はトイレに行きたくない。
- さっき行ってきた。
- なんであなたに言われて行かないと行けないの?
よく、「まだ、トイレに行っていないですよ」と答えがちです。
でも本人の中では「トイレにさっき行ってきた」は事実です。
ただし、それは3時間前の出来事だったりします。
まずは利用者様の言っていることをあなたが受け止めることが先決です。
否定しても「そんなことはない。」と話が進みません。
- なぜトイレに行きたくないのか?
- トイレに行って何か不都合があるのか?
- どうやってらトイレに行ってくれるのか?
まずは利用者様の声に耳を傾けましょう!!
トイレ拒否させない声かけの仕方
トイレ拒否されないためにはいくつか方法があります。その利用者様に応じた誘い方をしてください。
「トイレ行かない」と言われる方の声かけの方法
- 「トイレ」というワードを使わずに声かけする。
- トイレの近くを通った時に、流れで入る。
- 仲のいい他の利用者様にも声をかけてもらう。
- 「お願いしたいことがあるんです」と声かけしてトイレまで来てもらう。
- 「帰る前なので、何のため行っておきましょう」と誘う。
- 人を変えて声かけする。
残念ながら、拒否の強い方に関してどんな声かけしてもダメな場合もあります。
どうしても介助できなかったら、帰宅時に家族様に報告するしかありません。
諦めずに、トイレ介助させてもらえる声かけの方法を探し続けましょう。
まとめ
排泄介助は避けて通れない介助ですが、意外と難しくて新人介護士がつまづきやすいポイントでもあります。
- 介助技術
- 声かけ
- 羞恥心の配慮
どれも一朝一夕で身につくものではなく、実践した量に応じて熟練度が変わります。
つまり、介助した回数が上手くなるコツです。
利用者様で実践するのが恐ければ、上司や先輩を使うのも有効な手段です。
- 上司や先輩相手に介助の練習をする。
- 上司や先輩に付き添ってもらって実際に利用者様を介助する。
- 介護資格を取る。
初任者研修を取るときに実技の研修もあります。
介助の基本を学んだ上で理解した上で介助すると、安全に素早く適切に介助できるようになります。
介助技術の習得は早ければ早いことに越したことはありません。
現場で実践しつつ、仕事以外でも練習を積み重ねる。
身につくまでは苦しいですが、その苦しみを越えると意識しなくても自然に適切な介助ができるようになります。
介助技術が上手くなるのは、介護士のあなたが楽しく仕事をするために避けては通れない道です。
デイサービスで輝いて働くコツを伝授します。
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