結論:送迎時の家族様からの申し送り、連絡帳だけでなく事前連絡もすれば家族様からの信頼関係の基礎を固めることができます。
この記事の対象者
・家族様への対応に苦手意識のあるデイサービス職員
・デイサービスの管理者、リーダー
・家族様からの申し送りの伝え漏れに悩むデイサービス職員
です。
この記事を読むことで
・送迎時に家族様からの申し送りを正確に施設へ伝える方法
・連絡帳の取り扱い方
・事前連絡をするための5つ手段とそれぞれの特徴
を理解することができます。
申し送りの受け取り方、伝え方をマスターするとあなたの介護士としての専門性が上がります。
送迎は介護士が家族様と接触する1番の機会です。
その接触する上で避けて通ることができないのが
家族様との申し送りです。
申し送りは
- 利用者様の最新の情報を得られる。
- 利用者様、家族様の依頼を受ける。
- 利用者様、家族様の隠れたニーズを掘り起こすことができる。
- 介護士でありながら「お客様」とのコミュニケーションスキルを実践できる。
- 家族様との信頼関係を築くことで、利用者様への支援をしやすくなる。
つまり、失敗できな超重要な場面です。
しかし、就労されていて家族様と十分にコミュニケーションを取れないこともあります。
家族様とのコミュニケーション不足は
- 家族様とのすれ違い。
- 家族様が相談したいけどできない困りごとに気づけない。
- 情報不足による支援不足→利用者様、家族様の不満が大きくなる。
そうなると、だんだん家族様はあなたとあなたのデイサービスへの信頼を失うことになります。
信頼がなくなってくると
大きなクレームにつながります。
荷物の返却忘れや申し送りの伝え漏れがあっても最終的にクレームにならずに済むのは家族様があなたやあなたのデイサービスを信頼しているからこそ
大変な仕事だから、たまにミスしてしまうのは仕方ないわ。
と赦して頂けることが多々あります。
信頼関係とは申し送りの密度と言っても過言ではありません。
申し送りは送迎業務の大きな仕事の一つです。家族様との申し送りを確実に行えなければ家族様は利用者様をあなたに預けたいとは思えません。
家族様との信頼関係を得るための魔法道具【メモとペン】
家族様が話しはじめたらメモとペンを持ちましょう。メモとペンを持っているだけで家族様は「この職員さん話を聞いてくれている」と思ってもらえるようになります。
利用者様、家族様からの申し送りが始まるまでにメモとペンを取り出す。
利用者様の自宅に到着した時の送迎職員の手順は
- インターホンを押す。
- 利用者様の乗車席を確保する。
- 利用者様に乗車していただく。
- 荷物を送迎車に積み込む。
- ポケットに入れているメモとペンを取り出す。
- 家族様からの申し送りを聞く。
- 家族様に施設からの申し送りを伝える。
- 出発前の周囲確認をして出発する。
2人送迎の場合は、運転手に荷物の積み込みを任せて、助手のあなたは家族様からの申し送りを聞きましょう。
それまでにメモとペンを取り出しましょう。
メモとペンってただの筆記用具じゃなかったのね。
利用者様だけでなく、家族様とも信頼関係ができると
「介護職をやっててよかったなー」と思えるようになります。
- 「うちのおばあちゃんがいつもお世話になっています。」
- 「大変な仕事だけど、長く続けてくださいね。」
- 「今日も本当にありがとうございました。」
言葉としてはどこのサービス業でも、お客様から言われるありふれた言葉です。
でも、その言葉をもらうことで「私の仕事って本当に価値のある仕事なんだー」と思えます。
介護士(サービス業)が本当に価値のある仕事だと思うためには、自分でその環境を作っていくのが近道です。送迎の申し送りの際にメモとペンを取り出すことを習慣にするだけで、あなたは利用者様や家族様から感謝される価値ある仕事にできるのです。
メモとペンを持っているだけで利用者様、家族様の信頼を得られる。
前の職場や学生時代でアルバイト先での後輩を思い出してください。
あなたは後輩に新しくやる仕事を教えています。
その時に後輩が
- メモとペンを持ってあなたの話を聞いている。
- 手ぶらであなたの話を聞いている。
どちらがあなたにとって「好感」を持てますか?
おそらく前者でしょう。
これは、対家族様でも同じです。
メモとペンはただの筆記用具ではなく、人との信頼関係を作る道具でもあるのです。
特に何も書くことがないことが予測できても家族様が話しはじめたらすぐうにメモとペンを取り出す習慣をつけましょう。
うっかりメモとペンを忘れて・・・
5年ほど前の送迎時の話です。
利用者様の送迎で(1人送迎)で、利用者様に送迎車に乗っていただいた後家族様からお話がありました。
内容は後日のお休みの話です。
メモとペンを施設に忘れたので取り出せませんでした。
そして、私がメモとペンを出す素振りも見せないので
家族様はカレンダーを持ってきて説明してくださいました。
いつもはそこまでされない行為です。
今考えると、家族様はメモとペンを出さない私に対して「本当に聞いてくれているの?」不信感を示されていたのでしょう。
家族様から「メモしなくて大丈夫?」って聞かれるのを想像すると恥ずかしいですね。
メモとペンで家族様の信頼を得られると無駄な仕事が増えなくなる。
ここでの無駄な仕事とは
家族様からのクレーム処理です。
普段から家族様が「この職員さん、いつも私の話に耳を傾けて聞いてくれている。忙しいのにありがたいな」と信頼関係を築けるとクレームにならないです。
家族様の信頼があれば
- 荷物の返却忘れ。
- ケガがない程度の転倒事故。
- 利用者様の拒否が強いための入浴中止。
- タオル類の入れ間違い。
- 他の利用者様との喧嘩。
があっても許していただけます。
人が相手だから色々ありますよね。あなたも大変でしたねー。
と、クレームになる内容のことがクレームにならないのです。
信頼関係の基本は「傾聴」の積み重ねで、メモとペンを手に持つことはあ傾聴の基本的な姿勢です。
送迎は唯一介護士が家族様と接点を持つ機会です。
家族様からの申し送りを聞くときは必ずメモとペンを取り出しましょう。
メモとペンをただ持っているだけでは申し送り漏れの原因になります。家族様からの申し送りの要点をメモに書き、伝え漏れの内容にしましょう。申し送りの最終的な目的は施設に家族の要望を伝えることです。
家族様と申し送りをする3つの方法
家族様と申し送りをする手段は①連絡帳を使う②送迎時に家族様と口頭で③事前連絡の3つあります。絢音の職場では①〜③全て実施しています。3つとも実践することで、それぞれの短所を補うメリットがあります。
連絡帳
連絡帳とは「ノートに文章で家族様と施設が文章で必要な連絡をする」手段です。
メリット、デメリット
連絡帳の書き方や管理がめんどくさいですが、連絡帳を書くことが習慣化できれば問題ありません。
連絡帳担当の介護士が時間配分の意識が高まるという意味でも連絡帳は介護士の生産性(より多くの利用者様に満足してもらうこと)を上げることができます。
連絡帳は良くも悪くも証拠が残ることなんですよね。
連絡帳で伝えやすくなる内容
ズバリ、デイサービスでのサービス実施状況とその結果です。
具体的には
- バイタル測定の結果
- 入浴の実施状況
- 食事の摂取状況
- 水分摂取の総量
- レクリエーションへの参加状況
- 次回の送迎車到着予定時間(次の日もデイサービスの予定がある場合)
デイサービスで継続的に提供しているサービスの実施状況、予告です。
時間に制限されることなく、家族様に必要な情報を伝えられるのが連絡帳の最大のメリットです。
連絡帳を取り扱うのに注意する点(個人情報を漏らさない)
連絡帳は個人情報の塊です。
バイステックの7原則にもあるように利用者様の個人情報を守ることが利用者様の支援になります。
いつ、どこで、誰に自分が漏れるか分からないデイサービスへ利用者様は行きたいとは思いません。
極端な例をいうと、受診をするたびに自分の体重がSNSで拡散されるような病院には行きたくないのと一緒です。
連絡帳の取り扱いをミスすることで利用者様の個人情報が漏れることはあなただけでなく、施設の信用が失う重大なことです。
私も何度か連絡帳を違う利用者様に渡したり、返却できなかったりしたことがありました。その度に私は上司から厳しく叱責されました。連絡帳は利用者様の安全確保と同じくらい失敗してはいけない仕事なのです。
家族様からの口頭での申し送り
送迎時の申し送りは、連絡帳だけでなく家族様の口頭での申し送りもあります。連絡帳にマメに書いてくれる家族様もいれば、口頭での申し送りで済ませたい家族様もいます。
口頭での申し送りのメリット、デメリット
連絡帳を使わない選択肢を取れても、口頭での申し送りをしないという選択をすることはできません。
ここで、口頭での申し送りのメリット、デメリットを整理します。
口頭での伝達の最大のデメリットは
証拠が残りにくいことです。
連絡帳と併用して申し送るのが一般的です。
家族様から急に口頭で申し送られることもあるので、口頭での申し送りを避けることはできません。口頭での申し送りがはじまる前にメモとペンを取り出して聞き逃しのないようにしましょう!!
口頭での申し送りが便利な申し送りの内容
- 利用者様のレクリエシーションの参加されている時の様子。
- 内容が複雑な話。
- 謝罪も必要な内容。
- 家族様への依頼をする場合。
- 家族様への質問。
文字だと何度か家族様とやりとりをしないといけなかったり、表情や仕草も見ないと正確なニュアンスを汲み取れない場合は口頭での申し送りの方が家族様に伝わりやすいです。
内容が複雑な話を家族様に申し送るときは、私は連絡帳には短く必要最低限のことだけを書いて口頭で補足説明をするようにしています。
口頭、連絡帳それぞれメリット、デメリットがあります。それぞれのメリット、デメリットを解消するには連絡帳にも書くのが家族様へ正確に申し送りたい内容を伝えることができます。
口頭での申し送りをする場合の注意点。
- 家族様によって捉え方が違うので、使う言葉を家族様によって変える(選ぶ)。
- 結論→理由の順番で話す。
- 送迎先に到着するまでに話を組み立てる。
- 家族様の立場から考えて一番知りたい情報から伝える。
- 極力専門用語を使わない(ADLなど)
正確に伝わらなかったり、家族様からの申し送りを正確に読み取れない申し送りは申し送りしていないのと同じです。
介護職場は些細な情報でサービスの提供の仕方を大きく変えないといけない場合もあります。
まずは、家族様が言われている内容をそのままメモする方が家族様の意図を考えやすくなります。
口頭での申し送りは、家族様との「会話」です。会話は言葉や相手の表情など非言語的なメッセージも分析しながら言葉のキャッチボールをしないといけないので、実は難易度が高いんです。
事前連絡
事前連絡とは、利用者様の利用日の前日あるいは送迎出発前に自宅に連絡して①当日のお迎え時間②利用者様の体調の確認③その他伝えるべき内容の伝達をし、④家族様からの申し送りを受ける業務です。
事前連絡のメリット・デメリット
私の元職場では電話メインで事前連絡をしていました。
電話以外のツールを使いつつ、送迎時の口頭での申し送りや連絡帳も併用することでデメリットを克服することができます。
唯一解消できないのは、業務が増えることぐらいです。
事前連絡は利用者様の所在確認や体調確認の意味もあります。定期的に利用者様に連絡することで、利用者様や家族様自身あまり認識していない問題を掘り起こすこともできます。
事前連絡が便利な場面
- 家族様が就労されていて送迎時に出会えない。
- 利用日の当日のお迎え時間を伝えるついでに家族様からの要望を聞いたり、施設からのお願い事をする。
- 直接売り込み(イベントを材料に追加利用を勧める)をしたい時。
送迎時の申し送りでは得られる情報に限りがあります。
前日に事前連絡することで、利用者様や家族様から今まで知らなかった情報を得られることがあります。
デイサービスって、利用者様の「見守り」の意味合いもあるのね。
事前連絡もすると家族様とのすれ違いを最小化できる。
事前連絡は利用者様や家族様にとってできるだけ日常の環境に近い状況で話をしてもらうことができます。「今から面接する」という場面では緊張感が伴います。その緊張感を和らげる効果があります。
事前連絡の流れについては関連記事で詳細を説明しています。
事前連絡で思わぬ利用者様、家族様の気持ちを知ることができる。
事前連絡は施設から利用者様に連絡をする支援方法です。
より日常に近い環境で話をしていただくことで利用者様や家族様が話せずにいる気持ちを話していただけることがあります。
参考までに絢音が事前連絡でお聞きした気持ちは
- 1人だけで親の介護をしていて体力的に限界。
- 家族が介護を全く手伝ってくれなくてなんか腹が立つ。
- この前〇〇さん(他の利用者様)が利用していたけど、あの人と同じ送迎にしないでほしい。
- デイサービスのご飯で「残したら申し訳ない」と思って言えなかったが、実は毎回食べ切るのに苦労している。
これは具体的な物語として利用者様あるいは家族様から話されることがあります。
これはナラティブ・アプローチと呼ばれるものです。
その人が語る物語を聞き、その人らしい解決法を一緒に見つけていきます。新たなストーリーを生成し、再構築する中で、問題のある状況から決別することを目指します。
LITALICO仕事ナビ(https://snabi.jp/article/174)より引用
介護士は利用者様の身体的な支援だけでなく、家族様の精神的な支援もできるのです。
特にデイサービスの職員は。
ここでも傾聴力を発揮するタイミングです。
家族様の話を聞く機会が多い介護士は専門性の高い介護士です。
独居の方に事前連絡するときはわずかな違和感に気付こう。
今や独居の高齢者世帯は珍しくありません。
どんなに認知症がなくて健康的に暮らしている人でも心身の機能の衰えを完全に止めることはできません。
- 事前連絡をしたのに送迎当日に利用者様が行方不明。
- 電話に出ない。後から利用者様が怒って電話を施設にかけてくる。
- 利用者様が電話での声を聞き取れなくなっている。
- 急いで電話を取ろうとして自宅で転倒。
年齢の割にしっかりされている方でも気づくと認知症が進みすぎてどうにもならなくなっていたとうのはよくあることです。
事前連絡中の違和感程度のものも申し送りにあげ、利用者様とのコミュニケーションに問題が生じたら上司に相談をしましょう。
事前連絡に関するやり方についてケアマネに打診する必要があります。
利用様に新しく別の介護保険サービスを導入するきっかけって介護職の「気づき」であることが多いです。「気づき」は介護士の専門性のひとつとも言えますね。簡単にいうと、利用者様の普段とは違うところを探す「間違い探し」みたいなものですね。
事前連絡に使える5つの道具
私が事前連絡した頃は電話がメインでしたが、今ではこれだけの連絡ツールがあります。
電話
相手が高齢者なので、今でもメインで使っているツールです。
ただし、耳が遠い方が増えてきているので・・・
- ゆっくりと
- 大きな声で
- できるだけ低めの声で
話すようにしましょう。
必要であれば、単語で区切って話す気持ち伝わりやすくなります。
少しずつガラケーやスマホを持っている利用者様も増えてきています。
メール
- 仕事で日中はほとんど連絡の取れない。
- 事前連絡の履歴を残したい。
- 連絡帳をよく見忘れるが携帯であれば必ず見る。
家族様あてに使うと伝えたいことを伝えられるようになります。
ただし、家族様がデイサービスからのメッセージを読んだかどうかを確認する手段はありません。
ただ、家族様が「メールを読んでくれているだろう」と信じることしかできません。
メールを送るときは、件名、施設名、メールの送り主の名前をつけて送りましょう。挨拶などはできるだけ短めにし、結論から書くようにしましょう。
ファックス
- 利用者様がメモを取れない。
- 利用者様、家族様ともにメールを打つことが難しい。
- 事前連絡があったかどうか忘れて今うのでメモに残して欲しい。
時にファックスを使うと利用者様・家族様ともに当日のお迎え時間を把握することができます。
100名の利用者様がいたら1名、ファックスでの事前連絡を希望される方がいるかどうかぐらいの確率です。
ファックスの使い方ってたまに使うと操作方法が分からなかったりします。ファックスを送る機会があれば、操作方法を覚えておきましょう。私なら、事務所の職員に使い方を教えてもらうようにお願いします。
留守番電話機能に伝言
不在がちな家族様に一番使う手段です。
- 時間に制限されない。
- ケータイの伝言機能であれば履歴も残る。
- 業務時間内に事前連絡を済ませることができる。
なかなか連絡つかなくてもとりあえず連絡済みにすることができます。
全ての方に事前連絡が終わらないのに帰宅するのってなんか嫌ですよね。
LINE
私は使ったことはありませんが、LINEも事前連絡をするのに便利なツールです。
その1番の便利な点は
家族様がメッセージを読んでいるかどうか職員が把握できることです。
今、介護職場のスタッフ間のコミュニケーションツールとして一般化されつつあります。
僅かではありますが、スマホを使う利用者様や家族様がいます。
これから、LINEも事前連絡をするツールとして検討してください。
介護職場でITツールって浸透しづらいんですよね。いまだにアナログなツールがメインです。これからもっとITツールが浸透して業務が最適化されて生産性が上がればその分の時間を利用者様とのコミュニケーションに時間を使えるんですがね。
家族様との申し送りで大切なポイント
・送迎時に家族様の申し送りが始まる前にメモとペンを取り出す。
・口頭での申し送り、連絡帳、事前連絡の3つを使って家族様とのコミュニケーションを密にする。
・事前連絡をして利用者様、家族様の隠れたニーズを掘り起こそう。
介護職は介護だけでなく、利用者様・家族様へのコミュニケーションの支援も必要です。信頼関係の基本は「コミュニケーション」です。
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