利用者様のニーズを尊重しよう。
では、今日はバイステックの7原則の後半よ。
1、個別化の原則
2、意図的な感情表出
3、統制された情緒的関与
4、受容
だったわね。
利用者様の気持ちを大切する。そのために自分の感情をコントロールしましょうっていう話だったよね、お姉えちゃん。
さすが、琴音。
よく復習してきたわね。
今日は、後半の話になるわ。
後半も利用者様と信頼関係を作っていくのに、重要な考え方ばかりよ。
特に、秘密保持の原則については、場合によっては損害賠償請求や懲役、罰金を科されることもあるわ。
バイステックの7原則って言葉にすると簡単だけど、とても深い言葉でしっかりと自分の中で消化しないと利用者様に不信感を持たれることにもなるわね。
今回のポイント
- 非審判的態度(介護者は利用者様の価値観に善悪の判断をしない)
- 自己決定の原則(人は誰でも自分のことは自分で決めたい)
- 秘密保持の原則(守秘義務)
- まとめ
1、非審判的態度(介護者は利用者様の価値観に善悪を判断しない)
非審判的態度のポイント
- 利用者様は長年生きてきたプライド(自尊心がある。)
- 審判的な態度(利用者様の価値観への評価)は共感への妨げになる。
- 否定=残存機能の向上を制限する。
- 価値観の違いを認める。
- 利用者様とは、あくまでも介護士ー利用者の関係で。
否定は利用者様の残存機能を制限する。
非審判的態度が言いたいことは、「利用者様を否定するな」ということです。
私たちが、子供の頃はできていたのに今はできていないことがたくさんあります。
たとえば、小学生の頃と今の自分と比べて大きな声で挨拶ができるのは小学生の頃です。
なぜかというと、大きすぎる声で挨拶することで「うるさい!!」と否定された事実があるからです。
人が成長あるいは、残存機能を制限する最大の原因は「否定」されることです。
否定をしないようにするためには・・・。
自分と相手の価値観の違いを認めましょう。
そして、「そんな価値観や生き方もあるのか」と思うことで相手の否定をする気持ちを抑えることができるよ。
そもそも、みんな違う価値観を持っているからこそ自己成長ができるのです。
同じ価値観の人だけなら、ストレスはたまらないですが、刺激もありません。
刺激のない生活はただ「息をしているだけ」ということができます。
価値観の違いを認め合って生きていくのは人間だけが獲得した能力と言えます。
あなたは
2、自己決定の原則(人は誰でも自分のことは自分で決めたい)
幸せな人間は自己決定している。
幸せな人間は自己決定をしています。
なぜなら、自分のことは自分で決めたいという欲求があるのが人間だからです。
たとえ、恵まれた状況であっても自分で決定できない状況に人間は息苦しさを感じるからです。たとえば、自由に食べるものを自分で選べなかったり、今日着ていく服を誰かが決めていたり、あるいは会う人さえも自分で決められない状況だと、うんざりしてきます。
利用者様も同じで、自分のことを他人に決められたくないと思っています。
利用者様の自己決定を尊重しましょう。
認知症の方への自己決定を支援する考え方。
認知症の方でも、自分のことを決められる人であれば、問題ないですが、中にはコミュニケーションが難しい方や、元々の性格として自分で決めるのがむずかしい方もいらっしゃいます。
その場合は、
- 選択肢を用意する(3つぐらいがベストです)
- ご家族様に相談する。
- 生活歴から、予測する。
重度の認知症で意思疎通がむずかしい方の自己決定は実質不可能です。
しかし、その利用者様が何を選んでいたのだろうかということを予測することはできます。
それは、完全に自己決定てもらっているとは言いにくいです。
しかし、可能な限り「自己決定をしてもらいたい。」という介護士の姿勢こそが「自己決定の尊重」と言えます。
もちろん、自己決定できる利用者様にはしっかりとどのようにしたいか聞き取っていきましょう。
今度、○○さんのお誕生日なので、昼食を○○さんの食べたそうなものを提供していのですが、○○さんは何が好きですか?
ああ、おばあちゃんね。
おばあちゃんは基本的にはなんでも食べるけど、昔はよくおはぎを食べていたわ。
「戦争時文にはあまり甘いものは食べられない」といっていたわね。
そうだったんですね💖
それでは、次のお誕生日の時の昼食はデザートにおはぎをお出しします。
少し早いですが、お誕生日おめでとうございます。
おばあちゃん、とても喜ぶわ。
ありがとうね、桜さん。
とはいうものの利用者様の自己決定を尊重できない場面もある。
自己決定を尊重できない場面とは
- 明らかに、利用者様本人に危険を伴う。
- 他の利用者様や職員の危険が伴うこと。
- 公序良俗に反する決定。
- キーパーソンである主介護者のニーズと明らかに正反対である主張。
- ADLの低下や怪我、病気の悪化を防ぐために不適切なもの。
こういった場合は、利用者様の決定を尊重することはできません。
たとえば、デイサービスの3大ニーズの一つとして入浴サービスがあります。
しかし、認知症になるとお風呂嫌いな方は少なくありません。
自己決定の原則からすれば、「お風呂嫌がっているんだから、入浴しなくてもいいんじゃないの?」という考えになります。
確かに、お風呂に一日ぐらい入らなくても「死にはしない。」ことの方が多いと思います。
しかし、自宅では入浴できない利用者様にとって、デイサービスのお風呂というのは「全身の肌観察をする」いちばんの機会です。
高齢者の皮膚の状態から、いろんな健康状態を観察することが可能なのです。
デイサービスで入浴するからにはそれなりの理由があります。
したがって、デイサービスでの入浴を拒否されても、入ってもらえるようにするべきです。
とは言え、声かけの仕方や声をかける職員によって、入浴拒否されている方が入浴されることもあります。
出来れば、利用者様にも納得して入浴してもらいたいものですね。
3、秘密保持の原則(守秘義務)
個人情報=その人であると特定することのできるすべての情報です。
個人情報を守っていないと、懲役や罰金を科せらることもあります。
守秘義務違反は厳罰です。
【社会福祉士及び介護福祉士法】
(46条 秘密保持)
社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
(50条 罰則)
第46条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(日本社会福祉士会 HPより引用)
利用者様は他人には相談できないようなことを介護士であるあなたに相談することがあります。
そして、利用者様はその秘密を誰にも言わないでほしいという思いがあります。
秘密を守ることは、利用者様との信頼関係を作るのに必須となります。
職員同士の情報共有
とは言え、職員同士の情報共有をすべきことも多々あります。
たとえば、最近まで自立されたいた利用者様が、実は尿取りパットをされるようになっていて、しかも尿失禁が増えてきた場合が当てはまります。
この場合、利用者様から「あんただけにいうから、他の人には言わないで。」と言われることが多いです。
この情報は、職員同士の情報共有をすべき内容で、利用者様からは「誰にも言わないでほしい」という思いがある。
この時にどうすべきかというと、この利用者様が「誰にも言わないでほしい。」と言われていることも、他の職員に情報を伝えるべきです。
あとは、職員全員でこの利用者様の様子観察をしつつご本人の秘密保持のニーズも守られます。
職員全員で支援しないといけないことや危険を伴うことに関しては、すぐに職員同士で情報共有をしましょう。
あるいは、上司や先輩介護士にどこまで情報共有をすべきかを確認しておくのも一つの手段です。
あなたは大丈夫ですか?
- 個人と特定される内容は全て個人情報
- SNSの発信は半永久的に残る。
- 不特定多数の方がいる場所で利用者様の話をしない。
- 利用者様の情報をフロアに置いたままにしない。
- ブログ更新するときに、利用者様の画像を使用するときは、ご本人、ご家族様からの同意を書類でいただく方がベター。
ここでは、ついやってしまいがちな事例について解説します。
不特定多数の場所では利用者様の話をしない。
特に職場の人と飲みに行ったり、遊びに行ったりすると、仕事の話がメインになってしまいます。
仕事の話をするのは、問題ないのですが、その時に利用者様の話もしてしまいがちです。
たとえば、レストランで先輩介護士とご飯を食べていたとします。会話が盛り上がったので、うっかりをの利用者様と分かるような内容の話をしてしまった時に、その内容を利用者様のご家族様が聞いていたとしたら、その家族様の気分は良いものではありません。
不特定多数が集まる場所というのは、いつ、誰がいてもおかしくない状況なので、公の場で仕事の話をするときは特に注意が必要です。
SMSで発信すると半永久的に残る
この数年のうちにTwitterやLineなどのSNSが発達して、誰でも利用できるようになりました。
そして、このSNSは匿名性(誰が発信したのか分からなくすることができる)のために、会話やメールでは言えないようなことも発信できるようになりました。
反面、SNS上で利用者様の個人情報を発信してしまって訴訟にまで発展してしまうというトラブルもあります。
一度SNSで発信してしまうと半永久的に削除するのはむずかしいと言われています。
SNS上での発信は慎重に行ってください。
利用者様の情報をフロアに置いたままにしない。
介護記録は、介護士にとって大切の仕事の一つです。
利用者様の見守りをしながら、介護記録をつけることもよくあります。
その時に注意していただきたいのが、利用者様の記録物をフロアに置いたままにしないということです。
フロアに置いたままにすると、他の利用者様の目に触れる機会が増えますし、場合によっては記録物の紛失にもつながります。
記録物の紛失に関しては、情報漏洩と同じぐらい大きな問題です。
何年か前に、生命保険会社の名簿が流出したというニュースが流れた時にも大きな問題にされましたが、それと大差はありません。
どうしても、フロアに置いて作業しないと都合の悪い書類に関しては、見開きの書類ボードが売っているので、それも有効に活用しましょう。
そして、書類は使い終わったら指定の場所に戻すということを習慣づけましょう。
そう言えば、この前、書類を元に戻そうとした時にバイタル表がなくて、とても焦ったわ。
名前しか書いてないくても、名前も立派な個人情報だものね。
そんなことがあったのね。
私も勤め始めた頃は、「こんなところにバイタル表置いてたら、紛失するよ。」って上司に怒られたわ。
それぐらい個人情報って大切なことなのよね。
まあ、琴音の個人情報は私の頭の中にあるけどね。
確か、昨日のお風呂をのぞいた感じだと、
バストサイズは・・・・
お姉ちゃん!!
私の個人情報ばらさないで!!
それと、私のお風呂覗いていた件について、詳しく話を聞こうじゃないか!!
!!!!
仕方ないわね。
今回は、私がまとめをするわ。
- 個別化の原則(利用者様は個人として扱われたい)
- 意図的な感情表出(利用者様の感情をうまく引き出す
- 統制された情緒的関与(介護士は自分の感情を自覚して調整する)
- 受容(利用者様のありのままの姿を受け入れる。)
- 非審判的態度(利用者様の価値観に善悪の判断をしない)
- 自己決定の尊重(人は誰でも自分のことは自分で決めたい)
- 秘密保持の原則(利用者様の個人情報は漏らさない。)
というわけで、介護士として働く場合はバイステックの7原則を踏まえつつ、利用者様と関わっていきましょう。
コメント