結論:使える入浴方法が多いと利用者様は安心して入浴でき、介護士は楽に入浴介助することができます。
高齢者が自宅での入浴するには危険が伴います。
年々、家庭内での入浴中の溺死者数に絞ってみても増加傾向です。
しかも、そのほとんどが65歳以上の高齢者です。
80歳以上になると溺死者数がぐんと上がります。
つまり、自宅で高齢者を1人で入浴させるのは「死」の危険が高くなるということです。
そこで、デイサービスが家庭内での入浴事故を防ぐことになるのです。
デイサービスでの入浴は「介護士」がいるだけではありません。
人の力だけだと、危険が伴い、腰がやられるほどの重労働なるほどの入浴介助もデイサービスの入浴設備を使えば楽にしかも安全に入浴することができるのです。
今回は、デイサービスにはどんな入浴の設備があるのか解説していきます。
利用者様のニーズに合わせられるデイサービスの種類
デイサービスには3種類の入浴方法があります。
利用者様のADLを見極めて入浴方法を適切に選択すると、介助が楽になってしかも安全性も上がります。
まず、どんな入浴方法があるのか見てみましょう
「入浴」は利用者様がデイサービスを利用する大きな理由の一つです。
複数の入浴設備があるデイサービスはそれだけ利用者様にとって魅力的です。
チェアー浴(機械浴) | リフト浴(機械浴) | 個浴(機械浴) | 一般浴(大浴場) | 部分浴(足浴) | シャワー浴 | |
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イメージ | ||||||
介護度の重たさ | (4.0 / 5.0) | (5.0 / 5.0) | (3.5 / 5.0) | (2.5 / 5.0) | 申し送りによる | 申し送りによる |
介助時間 | 30分程度 | 40分程度 | 30分程度 | 20分程度 | 15分程度 | 20分程度 |
温度調整のしやすさ | しやすい(ボタン操作) | しやすい(ボタン操作) | めんどくさい(都度手と温度計で確認) | めんどくさい(都度手と温度計で確認) | めんどくさい(都度手と温度計で確認) | 介助前に利用者様に確認してもらう |
点検の頻度 | 3ヶ月に1回 | 3ヶ月に1回 | ボイラーの点検時期 | ボイラーの点検時期 | 必要なし | ボイラーの点検時期 |
お湯張りの手間 | 自動 | 自動 | タイマーが必要 | タイマーが必要 | タライの分だけ | いらない |
便利さ | (4.0 / 5.0) | (4.0 / 5.0) | (3.0 / 5.0) | (3.0 / 5.0) | (2.5 / 5.0) | ー |
施設内でのケース会議や夕礼で入浴種類の変更を提案するときに参考にしてください。
介護度が高くても楽で安全に介助ができる【機械浴】
介護度が高くなっても家族様が利用者様にデイサービスを利用させる理由の一つに入浴の設備(機械浴)があることです。
機械浴は介護士が楽に入浴介助するための設備です。
介護士が楽に介助できるということは利用者様を安全に入浴していただきやすくなるということです。
しかし、機械浴は操作できなければ介助の楽さや利用者様の安全を確保することはできません。
デイサービスに就職したら、介助技術と同時進行で機械浴の操作も体で覚える必要があるのです。
いろんなタイプの特浴がありますが、絢音が介助しやすかった機械浴は2つあります。
- チェアー浴
- リフト浴
いずれも「OG技研」という機械浴のメーカーが販売しているものです。
OG技研が販売しているチェアー浴とリフト浴を使用するメリットは
これからデイサービスへ就職面接を受ける人は、必ず機械浴も見せてもらい使いやすそうかどうか確認をしてください。
いずれあなたも使わないといけないからです。
銭湯みたいなお風呂の【一般浴】
一見元気そうな高齢者。
介護度でいうと要介護1や要支援1・2の方。
でも、個人ケースファイルを見ると大きな病気をされている方もいらっしゃいます。
いきなり機械浴を提案すると「あんなお風呂に入るのは嫌」と嫌がられます。
また、自立支援(利用者様が今できることはいつまでもできるようにする介助方法)の観点からも自立度が高いのに機械浴で入浴介助するのもよくありません。
そこで一般浴です。
一般浴は「銭湯」みたいな感じで入浴していただくことが可能です。
基本的に一般浴は「ほぼ自立」している方が対象です。
しかし、全く介助しないわけではありません。
基本的には利用者様の手の届きにくいところを介助します。
ここで忘れてはいけないのは、「1人で入浴するのは危険」だからこそ利用者様はデイサービスで入浴していることです。
入浴前にバイタル測定をしているとはいえ、いつ倒れてもおかしくない。
それがデイサービスの利用者様です。
ちなみに、「ただ見てるだけ」は見守りではありません。急に利用者様が倒れそうになっても介助で転倒を防げる位置で様子観察するのが見守りです。
湯船に浸かれない時の【シャワー浴】
デイサービスをご利用していただいても湯船に浸かれないことがあります。
湯船に浸かれないから入浴しないままだと体は垢だらけで肌はカサカサ。
髪の毛はバサバサになります。
清潔だけでも保持するために「シャワー浴」をします。
シャワー浴は湯船に浸かれないこと以外は通常の入浴と流れは同じです。
「どんな時に使うの?」あると入浴介助がスムーズになる2つの機械浴
デイサービスで一般的に使われている機械浴には二つあります。
大規模なデイサービスであれば両方ともあるところもあります。
【リフト浴】での入浴が最適な利用者様
一昔前の機械浴といえばこのリフト浴が一般的でした。
名前の通り利用者様にリフト浴用の寝台に乗っていただき、洗身・洗髪をする。
湯船に浸かるときは寝台ごと利用者様を湯船に浸かっていただくことができます。
最近はリフト浴用の寝台を浴槽にスライドさせ、湯船が上がるタイプのリフト浴もあります。
リフト浴ってどんなお風呂?
今のリフト浴はボタン一つで簡単に操作できます。
備え付けのシャワーの温度も蛇口を回すのではなく、ボタン操作で全て行えます。
最初は操作方法の取説は見ないといけないですが、一度取説を見ておけばワンタッチですぐに操作することができます。
リフト浴を使うメリット
最新のリフト浴は移乗介助さえできれば、介護度4・5のような重介助の方でもワンタッチで湯船に浸かれるのが特徴です。
つまり、寝たきりの方はもちろん、自力歩行されている方でも入浴が可能なのです。
デイサービスの入浴希望者にサービス提供では「時間」が勝負です。
リフト浴も使いこなさないと、全員に入浴していただくことはできません。
リフト浴の最大のメリットは重介助の方でも簡単に入浴していただけることです。
ほとんどのリフト浴は専用のストレッチャー上でで洗身、洗髪の全てを行える。
入浴時間の短縮だけでなく、利用者様への負担も少なくできます。
リフト浴の種類によって、専用のストレッチャーを高さを調整することができます。
寝たきりの方はもちろん、歩行がしっかりしている方も入浴することができます。
チェアー浴もある事業所の場合、チェアー浴に入りたいニーズが高くなります。
特に自力で歩行できる方にとってリフト浴は「寝たきりの弱った人が入るお風呂」と認識される利用者様が多いです。
しかし、中には「早くお風呂に入れたら、どちらでも良い」と考える利用者様がいます。
その利用者様に「リフト浴で入るなら早く入浴できる」と言うことを説明すると納得される方もいらっしゃいます。
【チェアー浴】でスムーズな入浴介助を実現!?
チェアー浴は寝たきりではない、車椅子移動がメインの方や歩行できるけど介助がないと転倒のリスクが高い方が使われます。
チェアー浴は椅子に座ったままで湯船に浸かれるので、自宅で入浴しているのとほぼ変わらない体の姿勢で入浴できます。
チェアー浴はこんな感じで湯船に浸かれる。
入浴介助の時に事故が起きやすい場面の一つが「浴槽をまたぐ」時です。
高齢になってくると利用者様ご本人は足が上がっているつもりでも、引っかかりそうな場面があります。
また、自宅では這ったり車椅子で移動したりしている方にとって湯船に浸かるのは夢のまた夢。
でも、チェアー浴なら椅子に座ったまま浴槽内に移動することができます。
個浴に簡易なリフトを備え付けているタイプの浴槽と比べても、足を曲げなくていいので介助者・利用者様ともに安全で楽な入浴方法です。
使いやすい機械浴を追求するなら、大きな施設でも使われている【OG技研】一択
機械浴を導入すると、劇的に利用者様が安全に楽に入浴することができます。
足を伸ばして湯船に浸かることができます。
しかも、介助者の介助も楽になるという一石二鳥。
私の職場で使っていたのは「OG技研」というメーカーの機械浴です。
介護士も利用者様もハッピーになれる最高のお風呂です。
操作が簡単な反面、費用がかかるのが最大のメリットです。
しかし定員数40名以上のデイサービスになると、1日に38名程度入浴介助をしないといけない時もあります。
そんな時、この機械浴があればスムーズに入浴介助を行うことができます。
単体で経営している事業所には手が出にくい機械です。
なので、先行投資としてこの設備を導入すると他のデイサービスと入浴で差別化を図ることもできます。
【このままの入浴で大丈夫?】ADLの変化別入浴方法の検討すべき3つの場合
利用者様のADLは変化がないように見えてます。
しかし、日々変化し続けています。
ADLが変化していても、様子を見てもいい場合とすぐに入浴方法の変更を検討しないといけない場合があります。
・退院してから、歩行状態や認知症状が安定
・褥瘡などの傷口部分を濡らすリスクが高い
日々の申し送りを確認したり、利用者様の小さな変化も全て申し送るのが「入浴方法の検討」のきっかけになります。
「今日は歩行時ふらつく」と言う小さな出来事も申し送りしておくと、利用者様が急激にADLが変化しても適切な入浴方法を提案することができます。
歩行状態や認知症状の急激な悪化の時は【特浴】で様子観察
昨日まで杖なしで歩行されていた方が、今日は朝から全く歩けなくて車椅子が必要になることがたまにあります。
この場合、入浴のニーズが強い方であればその日は特浴で入浴していただきます。
今後の入浴に関しては様子を見ながら都度入浴方法を決定。
歩行状態が変わらなければ、家族様やケアマネに特浴の提案をして了承を得られれば特浴へ移行になります。
歩行状態や認知症状が悪化する原因は利用者様ご本人の体の調子だけでなく、環境の変化でも見られることがあります。
利用者様のいつもと違う様子があれば申し送りをしてください。
退院以降、歩行状態や認知症状が安定してきたら【一般浴】で自立支援の促進
リハビリが始まるまでは病気や怪我で入院しているときは絶対安静です。
そして、入院中に必ずリハビリをしてくれるとは限りません。
つまり、利用者様の退院直後は下肢筋力が弱っていることが多いです。
場合によっては、理解力が低下するなど認知症状が悪化していることもあります。
状態を見るまでは安全第一で最初は特浴(機械浴)で入浴していただくことになります。
何回か入浴時の様子観察をして、歩行状態や認知症状が元に戻っている状態で安定しているようであれば、一般浴で入浴していただけます。
元々一般浴で入浴していただいていた利用者様が退院後も一般浴に入浴できるように支援するのも介護士の仕事です。
まずは、退院直前の情報(看護サマリー)を確認しておきましょう。
入院中にリハビリをして入院前とほぼ変わらないADLで利用再開される利用者様もいらっしゃいます。
褥瘡の傷口部分を濡らすのにリスクがある時は【シャワー浴】で清潔保持
利用者様に褥瘡や切り傷などの傷口を濡らさないようにします。
特に湯船はいろんな利用者様が浸かっています。
傷口部分から細菌などが侵入して感染症のリスクがあります。
そこで、湯船に入らずにシャワー浴で対応することで感染症のリスクを上げずに利用者様の清潔を保持することができます。
しかし、ここで一つ問題があります。
それは、
シャワーだけだと寒いわ〜〜〜!
【シャワー浴で利用者様の「寒い」を軽減する方法】
利用者様の好みにもよりますが、43〜46℃程度の温度がベストです。
ただし、お湯をかけるのはバスタオルをかけた部分です。
そうすることで、利用者様の肌にかかる頃にはちょうど良い温度になっています。
イメージ的には「蒸し風呂」状態で温めます。
うなじ部分は血管が集中しています。
ここの部分を温めると体全体が温まります。
余談ですが、熱中症の時にここを冷やすと体を冷やすことができます。
利用者様に熱くないか確認しつつシャワーのお湯を流してください。
まとめ
事業所によって実施している入浴は違います。
新人介護士の方は今回の記事を参考に、「自分でも簡単に操作できるか?」と言う観点で入浴場を見学してください。
管理者や施設長の方は次に入浴の設備を新しくするときに、今回紹介させていただいた「チェアー浴」、「リフト浴」の導入を是非検討してください。
介護士がの介助が楽になるだけでなり、利用者様も楽にしかも安全に入浴していただくことができます。
入浴の設備はいわば「先行投資」です。
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